米国ではThe Status Quoという言葉があります。それは、現状維持という意味です。Question The Status Quoでよく使います。「現状維持に疑問をもて」ということで、新しいことに向かうリーダシップの世界や、最新バージョンにアップアップしてほしいITベンダーが使います(笑)。
日本はどちらかというと、「常識を疑え」ということが多いです。私の経験では、英語では常識を疑えとはあまり言いませんね。Common Senseが英語の常識なのでしょうが、Common Senseはどちらかというと感覚や判断力(Senseですから)を意味して、漢字からも日本では知識を表します。「常識」の意味は、辞書で調べると「健全な一般人が共通に持っている、または持つべき、普通の知識や思慮分別」です。
常識を疑った結果できたビジネスの代表が、AirbnbとUberなのでしょうね。旅行はホテルに泊まる、タクシーはタクシー会社が運営するというそれまでの常識・規制を打ち破りました。Amazonも、本は本屋で買う、ロングテールは利益ができないという常識を打ち破りました。一方で、このような大半のケースは、リスクがあります。そこには規制があるからです。米国の企業は、規制を有利に変更していくのがうまいと聞きます。規制があっても、ビジネスを慎重に実装していき、自社のビジネスに合わせて規制をなくしていきます。そういう企業が大成功している気がします。一方、日本人は、規制に対して、まじめにとらえすぎているところがあるのかもしれません。
個人の仕事で常識を疑えというのは、多くの人もつ共有知識を疑えということであり、文化的にも結構難しいです。私は京都出身ですが、そんなことを京都で言ったら、「アホなこといいはる」と言われますよ。実行についても、“言うは易く行うは難し”です。疑うだけの豊富な知識のオプション(引き出し)がないと、もっている今の知識など、自分では疑えないからです。私は22年間住んだ京都と30年以上住んでいる川崎の文化を理解しておりますが、京都しか知らない人は京都の文化が常識だと思います。私は、両方をみて判断することができますが、京都しか知らない親類に、ある部分で話が交わることなく、宇宙人と話しているようだと言われたことがあります…仕事では、勉強して多くの知識を得て、今の自分の当たり前の知識が1つのオプションでしかないとなる状態を作る必要があります。
知識の引き出しを増やすのは、何も常識を疑うときだけのためではないです。打ち手が増えるので、何を実現するときの戦略面でとても有利になります。今回は、前回とは違うこの打ち手でやってみようかと考えることができ、戦術オプションが増えるのです。そのためには、いつも興味をもって物事に臨み、いつか、どこかで使ってやろうと知識を、脳の引き出しに記憶しておくのです。