
2021年6月25日、翔泳社主催のオンラインイベント「EnterpriseZine Day 2021」が開催された。基調講演には、全日本空輸株式会社(ANA)デジタル変革室 イノベーション推進部長 野村泰一氏が登壇し、「ニューノーマル時代のデジタル戦略」と題した講演で、ANAが推し進めているDXの取り組みを紹介した。
DXに向けたマインドセット変革のために「五輪の書」を策定

イノベーション推進部長 野村泰一氏
コロナ禍による移動の制限にともない、航空業界は大きなダメージを受けている。ANAもその例外ではなく、経営に大きな影響がおよんでいるが、野村氏は「こうしたピンチは、私たち自身の業務の在り方を根本から見直してDXの取り組みを大きく前進させるチャンスでもある」と述べる。
「ANAではコロナ禍を機に、大胆な生産性向上や新マーケット開拓などの経営戦略を推し進めようとしていますが、これらの実現にはデジタルの力が必須です。そのため、コロナ禍以前から進めてきたDXの取り組みがあらためて再評価されるようになりました」(野村氏)
同社では現在、「マインドセット」「内製力」「プロセスを変える」「新たなコミュニケーション」という4つのポイントに注力しながらDXの取り組みを進めている。中でもマインドセットの変革は、野村氏が真っ先に手を付けた領域だったという。
「従来型のIT部門は、QCDを担保するために標準的なプロセスやルールにきちんと従う開発手法を是としてきました。しかし、DXはビジネスプロセスを根本から変革する取り組みであり、既存のルールを守ろうとするだけではイノベーションはなかなか起こせません」と野村氏。
そこで現場のマインドチェンジを促すために、イノベーションを起こすための様々な行動指針を「五輪の書」というドキュメントにまとめて部内で共有した。宮本武蔵の「五輪書」にならって「風の巻」「水の巻」「火の巻」「土の巻」「空の巻」の5章で構成され、それぞれでイノベーションを起こすための様々なマインドセットが示されている。
野村氏は、「単なるお題目として提示するだけでは効果が期待できませんから、五輪の書に沿って行動しているかどうかを評価基準としました。また、内容は毎年更新しており、前年までに自分たちが経験して学んだことや失敗事例などを踏まえ、最新の環境に応じた行動基準を提示するようにしています」と説明する。
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吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)
早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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