何年か前に某社の面接を受けていたとき、同じようなビジネス形態であったCisco Systemsではさぞかし活躍されたのでしょうね?って言われたので、私は「Cisco Systemsではほとんど貢献できませんでした。理由はかれこれしかじかです」と述べました。その時、面接した方は、面食らっていました。結果はご想像にお任せしますが。ただ、Cisco Systemsでの失敗があったからこそ、その後、その失敗から学び、自分へパッチ対応したことで、今までマーケティングの世界でやってこられたのだと思います。
外資の面接では、「今までのキャリアの中で、一倍大きな失敗は何ですか?」と質問されることも、私が質問することも多いです。経験した失敗の規模の大きさって、キャリアでは大事なのですよ。それだけチャレンジを決行したということなので、ある意味、勲章です。ただ、同じ失敗を繰り返していると認められませんが。
これを読んでいらっしゃるような多くの方は、単純作業の繰り返しをやっているわけでなく、色々な仕事の意思決定を状況の判断で行っており、いわば答えのない世界にいると思います。そのような世界では、将来の成功のために失敗から学ぶことがとても大切になります。
ただ、「人生いろいろ」ではないですが、失敗にもいろいろあります。CEOが経営に失敗すると会社は大変なことになるので、それは避けなければいけませんね。お客様を怒らせるような失敗ももってのほかです。私の経験で、一番まずい失敗は、たぶん人事上の失敗です。人の雇用は長期に渡るので、採用や異動の失敗は、尾を引きます。他の人へのモチベーションにも影響します。人事は、慎重に行う必要があり、仮に失敗だったら、早急に是正する必要があります。
私が担当するマーケティングは、ある意味、失敗の連続です。想定したターゲットが反応しないといったことが頻繁に起きるからです。そこで何が重要かというと、アジャイルアプローチをとること。まずは実行してみて修正を迅速に入れていくことです。まったくダメなら、早めに諦めるのです。残念ながら、私たちに、先を見通す予知能力はありません。経験によって、ある程度は予測できますが、現在は、不確かなVUCAの時代といわれており、先の見通しはつきにくいのです。データが取得できるような分野は、機械学習が進化して、ある程度、予測の精度は上がってきましたが、人間相手に、しかも、マスを相手に仕事をしているので、最初に考えたことがドンピシャ当たることはそれほど多くありません。そういう意味では、経験と勘でスタートして、予測型のアナリティクスや機械学習を駆使しながら、失敗したらそれを成功につなげていくこと、また、早期に中止して痛手を最小限にすることが求められるのでしょうね。私はマーケティングで失敗したって、マーケティング予算を少し無駄にするくらいで、そんなのまた取り返してやると楽観視しています(上司に怒られそうですが)。
実施してみて、そこから知見を得て、修正していく、この連続こそが大事なのです。これは、日本で一般的なPDCAとは違います。PDCAはその1周のサイクルが比較的、長いので、迅速に正しい方向に舵をきることは難しいかと思います。やるべきことは、アジャイルです。短期のスクラムを成功のために回していくのです。
失敗には、避けなければいかない失敗と、改善ができるまたは学習から将来回避できる失敗があります。また、別の軸では、経営へのインパクト度合というものも考慮しないといけません。改善ができ、かつ、改善して経営に好影響することで、我々は失敗する必要がありますね。成功のための失敗です。たとえば、日々のオペレーションなどがそうだと思います。
私は、もちろん、まったく面識がありませんが、故人のスティーブ・ジョブスも失敗を成功につなげる天才なのかなと思います。NeXTやNewton、ありましたね。あれほどの大きな失敗を、MacやiPhoneなどの成功に転嫁できるなんて、やはりスケールが違います。マイクロソフト社も、今、考えると、盛大な発表会をして、鳴かず飛ばずのものは一杯あった気がします。BobとかKinとか、その他名前も思い出せない家電との統合技術とか…。