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変貌するERP市場とM&A最前線 ――Inforの事業売却とHexagonとの協業で浮上するKoch

edited by DB Online   2021/07/21 08:00

Kochが主導してInforとHexagonの協業態勢を演出

 昨年段階でInforジャパンでは、今後の注力領域としてEAMを挙げていた。今回のEAM事業の売却とHexagonとの協業は、その戦略を止めるものではない。さらに補完するもので、日本の企業に対しビジネスにより確実な成果をもたらすサービスを提供できると言う。Hexagonは、EAMプラットフォームへの追加投資で、EAMをさらに改善し独自の補完的なソリューション、知識、エンジニアリングでサービスを拡充できる。それにより静的なEAM(設備資産管理)から、リアルタイムなAPM(設備パフォーマンス管理)へ移行することとなる。今回の提携はInfor、Hexagon、そして日本やその他の地域の顧客に、大きな利益をもたらすとInforジャパンでは考えている。

 ところで今回の買収と協業を演出したKoch Industriesは、米国カンザス州に拠点を置く石油、エネルギー、繊維、金融などを手掛ける非上場の多国籍複合企業だ。創業以来、Koch家の人間が経営を主導しており、多くの子会社が各種製品の製造、流通などに携わるコングロマリットを形成している。InforがKoch Industriesに買収された当初は、InforのアプリケーションはKochの企業群のためのソリューションとして最適化されるか、あるいはタイミングが来れば売却し売却益を得ることが目的なのかとも考えていた。

 今回のようにグループ内で事業を移動させ、製造業向けに最適化しようとする動きを見ると、Kochグループ全体で製造業に対するより良いITソリューションの提供を目指しているように見える。そう考えれば、これまで製造業向けのSaaS ERPの市場を「Oracle 対 Infor」や「SAP 対 Infor」という構図で見てきたが、今後は「Oracle 対 Koch」「SAP 対 Koch」と捉える必要があるのかもしれない。

 Kochは米国では最大の非公開企業としても知られ、Kochグループ自身が巨大な製造業でありエネルギー産業をも担う存在だ。そのため同社はグループの中に製造業やエネルギー産業のビジネス実践ノウハウを蓄積しており、それをInforやHexagonから提供するITソリューションに生かせることになる。これは、ソフトウェアを中心としたITサービスを提供するOracleやSAPにはない優位性だろう。今後はITだけではないリアル世界を持つプレイヤーが、エンタープライズSaaSの市場で存在感を見せるのかもしれない。それにはKochが今後、どういった企業や技術を買収するのか、注目する必要がありそうだ。



著者プロフィール

  • 谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

    EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーター かつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリストとして、クラウド、データベース、ビッグデータ活用などをキーワードに、エンタープライズIT関連の取材、執筆を行っている。

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