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ERPのカスタマイズは悪なのか? クラウド移行の遅れの理由について

edited by DB Online   2021/10/01 12:00

クラウド時代のERP移行とカスタマイズ

 少し前のERPとはいえ、それなりに近代化しているので、データの活用は可能ですが、すでに機能追加などはストップしており、技術の老朽化と、肥大のままの状態になっており、レガシーに近くなっていると思います。データ活用も、売上や在庫データをBIツールで見るレベルが多いと思われます。本来、データドリブン経営をするためには、多角的なデータを見る必要があります。

 また、欧米をみると、ERPの導入は、全体IT戦略の第1歩であり、その「当たり前業務」のSystems Of Records(SoR)周りに曼荼羅のように、各種のアプリケーションが統合されていきます。特に近年では競争を生むSystems Of Engagement(SoE)が多いと思います。国内企業では、バックオフィスのERP導入がゴールの場合が多く、その低いゴールで止まってしまっている課題があります。

 そもそもERPとは、Enterprise Resource Planningの略で、企業のリソースを総合的に計画・管理するためのソリューションです。よって、カネだけでなく、モノ、ヒト、データの資産を対象にする必要があり、調達から販売、サービスまで一気通貫した情報管理と活用を提供し、経営戦略の迅速化やオペレーションの効率化を実現するものです。会計や販売管理など、カネの管理だけでは不十分なのです。また、そこだけで移行となると、バックエンド業務であるためにROIがという話に絶対なります。製造業であれば生産管理や調達、流通であれば流通チャネル管理、調達、需要予測などまでカバーして、初めて生きるソリューションではないでしょうか。それに、新しいビジネスを立ち上げていかないと企業の成長はありません。収益を確保する既存と、成長エンジンの新規のビジネスに、柔軟に対応する必要があります。

 基幹業務を新しいプラットフォームに移行できない企業は、第3者保守サービスによるサポート延長やRPAによる操作の自動化を使って、延命をする方法もあります。でも、それは一時しのぎになります。なお、RPA(これは私にとっては懐かしいアプリケーションです)については、1991年ごろにエンジニアをしていた時に、ベンチ―マークテストの際に、サーバーベースの画面シュミュレータを使っていました。その技術を、仮想化、近代化して、セキュリティで強化して、今のRPAに進化してきましたが、本質はあまり変わっていない印象です。移行できないERPが多い=古い業務プロセスが残るので、日本でのRPAの市場が大きいと聞きます。

 古いERPの移行の候補は、今の時代、クラウドERPになります。クラウドERPの特長を列挙します。Saas型なので、運用はベンダーが実施しますので、自社に運用リソースが不要です。毎月、数か月一度、機能アップがされますので、1つのインスタンスを複数社と共有するマルチテナント型では、その恩恵を受けることができます。

 また、Gartner社がいうポストモダンERP型になっているので、共有基盤の上で、必要なモジュールだけで使うことができます。共有基盤の下でデータが管理されているので、一気通貫したデータ活用もできます。クラウドERPはとても魅力的ですが、移行のコストと、カスタマイズをどうするかが議論になります。移行のコストは、できるだけカスタマイズを抑えて、パラメータで構成するかがカギかと思います。クラウドERPといっても、カスタマイズする機能はもっているものは多いのですが、なるべく、標準機能と構成で対処して、差別化を生む分野に限定してカスタマイズすることが大切です。その場合、差別化を生まない分野のカスタマイズについては、業務を見直しERPのプロセスに合わせる、もしくは、ベンダーに依頼して、標準機能に組み込んでもらい対応するのがいいです。ただ、それでもROIの議論になりますので、統合ERPが経営にどう有効か、ROIのReturnをアピールする必要があります。



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著者プロフィール

  • 北川裕康(キタガワヒロヤス)

    クラウドERPベンダーのインフォア(Infor)のマーケティング本部長。33年以上にわたりB2BのITビジネスにかかわり、マイクロソフト、シスコシステムズ、SAS Institute、Workdayなどのグローバル企業で、マーケティング、戦略&オペレーションを担当。その以前は富士通とDECでソフトウェア技術者。マーケティング、テクノロジー、ビジネス戦略、人材育成に興味をもち、日々格闘中。

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