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北川裕康のエンタープライズIT意見帳

デジタルで進化するBtoBマーケティングの最前線。ABMで狙った企業を逃さない

 ABMという言葉は聞いたことありますか? BtoBマーケティングでは、このABMが大流行りです。ABMだけを行う企業も中にはでてきました。ABMは、Account Based Marketingの略で、特定のターゲット企業に対して、古い言葉ではOne To Oneマーケティングを実行するものです。デジタルやSaaSの浸透により、以前は、家内工業みたいなやり方だったOne To Oneマーケティングが、より拡張性が高くなり、幅広いターゲット企業に対して実行できるようになっています。実は、日本はここでも大きな後れをとっていると感じます。

ABMの2つのアプローチ

 ABMには、2つのアプローチがあります。特定の数社に対するABMと、より広いカバー範囲のスケーラブルなABMです。私は、この2つを組み合わせるのがいいと思います。

 そもそも、ABMのターゲットとなる企業は、営業がリストアップしたNamed Account(攻めたいアカント)やマーケティングがターゲットにしているセグメント(年商いくら以上の特定の業種など)です。ABMを、Named Accountで実施することで、マーケティングと営業が、より密接に連携できるのです。2つのアプローチを見てみましょう。

 特定の数社に対するABMは、最重要顧客に対して、カスタマイズしたマーケティング活動を実施するものです。例えば、北川商事という会社を狙っているとします。北川商事向けの特別なセミナーを、北川商事のオフィスで実施したり、北川商事向けのカタログやニュースレターを作ったりする感じです。ちょっと古典的ですね。

 これは、顧客ごとに個別に何から実施するため、コストのかかるものです。ですから、できれば営業と一緒に、その企業ごとにアカウントプラン(どのように攻略するかのプラン)を作成して、それをベースにABM作戦を練るのがよいです。Workdayでは、このアカウントプランが、営業、BDR、マーケティングのコラボレーションツールとして位置づけられており、Review & Improveという名目で、カイゼンを継続的に実施していました。最近は、Salesforceなどと連動するAltify社などのアカウントプラン用のアプリケーションがあり、使うととても便利です。

 一方、この頃増えてきているのは、よりスケーラブルなABMを実施することです。数千のNamed Accountからの機会を創出するのが目的です。このNamed Accountを特定するサービスも色々とあります。グローバルのIT企業でよく使われているのはHG Insight社のSaaSです。これは、売上、業種、本社の位置などの一般的な企業プロファイルに、どのようなシステムにどれくらい投資しているかを加えています。社内のデータサイエンティストやアナリストが、事例、採用情報などの外部データを使って、数字を統計的に作り出しているようです。大手企業ではかなり近しいと思います。日本の企業も、対象に入っています。

 スケーラブルなABMは、色々なマーケティングツールがSaaSで登場しています。デジタル万歳です。このABMで、どのようなことができるかの一例を示します。ある特定の企業に属する人に、その企業専用のデジタル広告(バナー広告や検索広告)を表示します。そして、それをクリックすると、次にその企業専用のポータルサイトが提供され、そこには企業名や企業のサービス、場合によってはクリックした本人の名前などが表示されています。さらに、表示されるホワイトペーパーは、その企業が属する業種に関連したものです。これは実は現実にあり、LinkedInをみていると米国のGartner社が同じことを当社向けに実施していました。当社がNamed Accountの1社なのでしょう。Inforの製品情報がGartner社のサイトにデジタル広告として表示されており、ヘッドラインもInfor専用です。それをクリックするとInforの製品名などが入ったポータルサイトがあり、Infor社の担当営業との会議が設定できるようになっていました。ついつい見てしまいますよね。

インテントがスケーラブルなABMの鍵

 このようなことが実現できる面白いABM関連のアプリケーションを紹介します。最近のマーケティングの世界では、Intent(インテント)という言葉がよく使われます。何か意思(Intent)をもった企業を取り込む活動です。代表的なIntentは検索です。何かに興味があると、その次はかなりの確率で検索をするので、その機会をIntentとしてとらえるのです。そのために、米国のDemandBase社、MRP社が提供するサービスがあります。Named Accountと、それらの企業の検索で使うような検索ワードの一覧を、事前にアップロードしておきます。すると、Named Account上の企業の不特定のだれかが登録したような検索ワードで検索すると、その企業がIntentをもっているのが分かります。例えば、翔泳社のだれかがERPを検索ワードに使うと、翔泳社はERPに興味があると分かります。営業やインサイドセールスはそれをみて、キーワードから類推して興味分野を想定して、その企業の既存コンタクトに連絡します。また、広告ネットワークと繋がっている場合はディスプレイ広告を実施して、コンテンツ・シンジケーション(ホワイトペーパーダウンロード)することができます。

 日本ではITreviewという名前のレビューサイトがありますが、そのベースの米国のG2 Crowdも同じような目的のものです。自社の特定の製品をサイトに登録して、オープンに評価してもらい、その結果を裏でみます。どの企業が評価したかまでは分かるので、その企業情報をもとに、上記の検索と同様に既存のコンタクトに連絡するのです。CRMと連携も可能なので、CRMのコンタクト情報をG2 Crowdに表示させることが可能です。これもIntentです。

次のページ
Folloze、HighSpot、Sales IQ……マイクロポータル作成のためのABM

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この記事の著者

北川裕康(キタガワヒロヤス)

クラウドERPベンダーのインフォア(Infor)のマーケティング本部長。33年以上にわたりB2BのITビジネスにかかわり、マイクロソフト、シスコシステムズ、SAS Institute、Workdayなどのグローバル企業で、マーケティング、戦略&オペレーションを担当。その以前は富士通とDECでソフトウ...

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