富士通で初めてのデジタル部門の創設やサービス開発に取り組んで来た著者の実践に基づくDX連載の第17回。著者は、富士通 デジタルビジネス推進室エグゼクティブディレクターの柴崎辰彦氏。シリーズの第3部となる「実践研究編」では、実際にデジタル変革に取り組む企業の取り組みをプロジェクトリーダーのインタビューを通してご紹介する。実践研究編2つ目の事例は、全日本空輸株式会社(以後ANA)デジタル変革室イノベーション推進部部長の野村泰一氏にお話をお伺いした。
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前回(イノベーション実践ツールとワークショップの方法)では、ANA野村さんたちがデジタル変革を生み出して来た具体的な活動について紹介してきた。連載の3回目は、ビジネス変革を支える新たなアーキテクチャーと具体的な成果について紹介する。
改革のエンジンとなるための取り組み
野村さんたちは、内製化の体制を作るだけではなく、改革のプロセス全般についてボトルネックが生じないように様々な施策に取り組んできました。「イノベーションハニカム」を受け皿に先端テクノロジーがいま世の中でどのように使われているのかを理解するために毎月オフサイトミーティングを開き、大手ベンダーからスタートアップまで最先端の技術の吸収に努めてきたのです。そして4つのワークショップを活用して能動的にアクションを起こしつつ、その結果を社内サイトや社内SNSでイノベーションの輪を広げることも怠りません。
「デジタル変革(DX)の取り組みをより一層加速させるために、IT部門主導で社内コミュニケーションの活性化を狙った施策に取り組んでいます。社内SNS上で、社内の実践事例や最新テクノロジーの紹介や各部門でのワークショップの開催報告などの情報を発信し始めた結果、約6,000人を超える従業員がSNSグループに登録するまでに輪が広まりました。また、DXの活動を社内に周知するために、リアルイベントとウェビナーを組み合わせた『イノベーション・ウィーク』という社内イベントを開催し、3,000人を超える従業員が参加してくれました。IT部門を昔のイメージで捉えている人は、まだ多いのですが、これまでIT部門と直接やりとりする機会のなかった様々な部署の従業員がIT部門と交流を持つようになり、様々な部門でイノベーションの芽が生まれつつあります。このような地道な取り組みが、未来を作っていくのではないかと感じています」(野村氏)
活動が広がるにつれてIT人材の拡大にも務めています。IT部門の人的リソースについては、IT部門内のリスキリングやシニア層の転換に加えて、整備士やグランドホステスなど他部門からの人材活用も加速させています。

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柴崎 辰彦(シバサキタツヒコ)
香川大学客員教授 富士通株式会社にてネットワーク、マーケティング、システムエンジニア、コンサル等、様々な部門にて“社線変更”を経験。富士通で初めてのデジタル部門の創設やサービス開発に取り組む。CRMビジネスの経験を踏まえ、サービスサイエンスの研究と検証を実践中。コミュニケーション創発サイト「あしたの...
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