前回(イノベーション実践ツールとワークショップの方法)では、ANA野村さんたちがデジタル変革を生み出して来た具体的な活動について紹介してきた。連載の3回目は、ビジネス変革を支える新たなアーキテクチャーと具体的な成果について紹介する。
改革のエンジンとなるための取り組み
野村さんたちは、内製化の体制を作るだけではなく、改革のプロセス全般についてボトルネックが生じないように様々な施策に取り組んできました。「イノベーションハニカム」を受け皿に先端テクノロジーがいま世の中でどのように使われているのかを理解するために毎月オフサイトミーティングを開き、大手ベンダーからスタートアップまで最先端の技術の吸収に努めてきたのです。そして4つのワークショップを活用して能動的にアクションを起こしつつ、その結果を社内サイトや社内SNSでイノベーションの輪を広げることも怠りません。
「デジタル変革(DX)の取り組みをより一層加速させるために、IT部門主導で社内コミュニケーションの活性化を狙った施策に取り組んでいます。社内SNS上で、社内の実践事例や最新テクノロジーの紹介や各部門でのワークショップの開催報告などの情報を発信し始めた結果、約6,000人を超える従業員がSNSグループに登録するまでに輪が広まりました。また、DXの活動を社内に周知するために、リアルイベントとウェビナーを組み合わせた『イノベーション・ウィーク』という社内イベントを開催し、3,000人を超える従業員が参加してくれました。IT部門を昔のイメージで捉えている人は、まだ多いのですが、これまでIT部門と直接やりとりする機会のなかった様々な部署の従業員がIT部門と交流を持つようになり、様々な部門でイノベーションの芽が生まれつつあります。このような地道な取り組みが、未来を作っていくのではないかと感じています」(野村氏)
活動が広がるにつれてIT人材の拡大にも務めています。IT部門の人的リソースについては、IT部門内のリスキリングやシニア層の転換に加えて、整備士やグランドホステスなど他部門からの人材活用も加速させています。