こちらは、chiefmartec(chiefmarte.com)が毎年公表しているグローバルのMarketing Technologyソリューションのランドスケープです。2020年4月で、8,000もの主要なソリューションがあります。まさに群雄割拠の状態です。
引用元:https://chiefmartec.com/2020/04/marketing-technology-landscape-2020-martech-5000/
ABM(Account Based Marketing)、Email Marketingなどのソリューションの分野ごとに島になっていますが、どの島もソリューションで溢れている状況です。それぞれの会社がもう見えません。では、この中のどこかが将来に向けて、天下統一していくのかというと、その可能性は低く、毎年、1,000種類くらい増え続けてきた過去のペースが当面は続くと予想されます。どのソリューションを、自社に選択すればいいのか判断に困りますね。もう笑うしかありません。
最近、ABMツールについて、国内のスタートアップの会社と話す機会がありましたが、スマホ世代の若い人たちが頑張っていることを知り、ちょっと安心しました。そういう若い会社が新しいアプリケーションをうじゃうじゃ作っているのです。
マーケティング、アナリクティス、セールスツールなど、顧客や社員をエンゲージするようなSystems of Engagement(SoE)に分類されるようなソリューションは、スマホのアプリケーションのようになってきています。ある意味、エンタープライズ市場向けの製品でも、ソリューションで溢れ、使い捨て感覚になってきているのです。一方で、業務アプリケーションのSystems of Record(SoR)は、トランザクションをきっちりと管理し、使用年数が長くなるので、もう少し慎重に導入判断がされると思います。
エンタープライズアプリケーションの数を出しているサイトはないと思いますが、調査会社IDCによると「2020年の世界のエンタープライズアプリケーションの売上高は、組織がデジタルレジリエンスへの投資でパンデミックに対応したため4.1%増加」[※1]と、市場は確実に成長しています。
[※1] https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS48232421
SoE系で、使い捨て感覚になっているのは、やはりSaaSとサブスクリプションの影響が大きいといえます。所有する、管理する必要がなく、契約している期間だけ使用するので、データさえ移動できれば、新しいアプリケーションに移管しても、それほど苦労しないからです。もちろん、そのアプリケーション上で作った機能やレポートの移管の問題はあります。
私が所属している企業でも現在、CRM、マーケティングオートメーション、WebサイトのCMS(Content Management Server)が、別のソリューションへ、同時進行で、移行し始めています。そんな重要な基盤アプリケーションを一度に変更して大丈夫かと心配するほどです。ABM、CDP(Customer Data Platform)など新しいツールもどんどん導入されています。そのため、勉強を休む暇がありません。
当社の社員の反応は、「移管や新規導入はちょっと面倒だけど、有効だし、まあいいか」という感じです。マーケティングオートメーションの作成された膨大なページも、10%くらいは残すけど、後は捨てるね、とあっさりしたものです。
このような継続的な変化が当たり前なのがデジタル世界なのです。それにどう社員が適応するかです。そして、このようなツールを使いこなせないと、激しい競争にも勝てませんし、精通しないとキャリア上不利にもなります。かなりのおじさんの私は、ラーニングを手抜きすることなく、デジタルネイティブの人たちとも共存しないといけないですし。
もちろん、自社に合ったソリューションは何かと評価して、導入が決定されます。しかし、SoEの世界では、それほど多く人数をかけずに、担当がよいと思ったもので、導入検討が進んでいきます。それがプロの仕事です。詳細な機能比較をして、あれやこれやとやっている間にも、新しいソリューションが登場して、それをさらに評価するとなると、永遠に検討する羽目になります。日本の企業にまだ多いのは、どのような決定でも、石橋を叩いても、前に進まないか、かなりゆっくり進むという、保守的な体質です。完全に真逆の世界であり、意思決定のスピードと失敗から学ぶ次の意思決定に活かすことが、不確か、不確実なVUCAの時代には大事かと思います。
国内の企業では、導入決定の際に、ベンダーに事例を要求することが多いです。EnterpriseZineでも、事例の記事が人気を博しています。それが、業界の最先端を行っているものや、新しい使いかたであれば、事例を参考にするのもいいと思います。ただ、国内の同業他社が導入した事例というだけで、安心材料として必要とするのは、このデジタル時代、もうやめたほうがいいと思います。本当に最先端のDXに取り組んでいる企業は、国内外に関わらず、また、企業のサイズに関わらず、最先端のものを参考にしています。SAS Institute時代は、お客様は、日本の事例ではなく、世界の事例を紹介してほしいという声をよく聞きました。
ここでちょっと心配なことがあります。ソフトウェアについては、以前なら日本語版へのローカライズが、かなり優先的に行われていました。しかし、最近、日本語化があまり重視されなくなっているように思えます。かといって、中国語化されているわけでもなく、どうも英語版だけの世界が広がってきているようです。
群雄割拠の時代、成長企業が多いので、日本語化の余裕がないのでしょうが、日本の世界での地位の低下も影響していると思います。一方で、DeepLなどの機械学習ベースの翻訳ツールが普及してきているので、「日本語版は必要なくテクノロジーで補えば良い」という時代なのかもしれません。それにしても、Unicodeの時代に、日本語が通らないソフトウェアの開発は勘弁してほしいです。
私は普段、もちろん日本語で仕事しますが、PCなどのアプリケーションはすべて英語表示で使っています。その方が、シームレスに世界のアプリケーションと頭の中で統合できるからです。