香川大学八重樫教授に聞く:学生によるローコード/ノーコード開発へのチャレンジ
第22回【DX実践研究編】香川大学のデジタル変革に向けた挑戦【後編】
富士通で初めてのデジタル部門の創設やサービス開発に取り組んで来た著者の実践に基づくDX連載の第22回。著者は、富士通 デジタルビジネス推進室エグゼクティブディレクターの柴崎辰彦氏。シリーズの第3部となる「実践研究編」では、実際にデジタル変革に取り組む企業の取り組みをプロジェクトリーダーのインタビューを通してご紹介する。実践研究編4つ目の事例は、香川大学創造工学部創造工学科(以下、香川大学)八重樫理人氏にお話をお伺いした。
前回(香川大学八重樫教授に聞く: 変革のキッカケはアイデアソン・ハッカソン)では、ソフトウェア工学の研究者の立場からソフトウェア/情報システム開発を成功に導く八重樫研究室の取り組みや香川大学での先進的な取り組みを紹介してきました。後編では、現在進行中の香川大学デジタルONE構想を牽引するDXラボ(DX推進チーム)の取り組みを中心に詳説します。
デジタルONE構想を牽引するDXラボ(DX化推進チーム)とは

香川大学デジタルONE構想を牽引するDXラボとは、どのような組織でしょうか。筧学長直下に新設された情報戦略室では、情報化を進める取り組み(いわばアクセル)と情報セキュリティ(安全・監査)をバランシングしながらデジタル化による学内改革の施策を実行しています。学内のシステム化を担う情報メディアセンター(八重樫先生がセンター長を兼務)が、様々な施策のブレーン機能とサポート機能を担いデジタルONE構想を牽引しています。企業における情報システム部門やDX推進部門の位置付けによく似ていますが、経営(学長)直下であることもポイントです。DXラボは、情報工学を先行する学生を中心(一部企業からも参加)に情報メディアセンター内に設置され、学内の様々なDXプロジェクトを牽引しているのです。

DXラボの活動の秀逸な点は、教員・職員に加えて学生も参加してDX化を推進しているという点です(教・職・学連携で香川大学のDX化を推進)。具体的には八重樫先生をはじめとするDX化推進部門の教員が中心となり、社外から招聘した特任教授や客員教授をアドバイザーに創造工学部を中心とした情報メディアセンターで働く学生を非常勤職員として採用しています。
つまり、社会で即戦力となるデジタルサービス開発を学生の皆さんに実践してもらい、非常勤職員として報酬を支払い(教育の現場とはいえ、学生にとっては自身の技術で対価を得る訓練になる)、学内の様々なサービスを開発してしまう(外注丸投げから解放し内製化の推進)という一挙両得の取り組みなのです。
具体的なプロジェクトが発生するとDXラボと現場の事業部門のメンバーでプロジェクトチームを設置します。例えば、「就職・学生支援DX」「研究支援DX」「学務関係DX」「給与福利DX」「知財管理DX」「旅費関係DX」などです。
プロジェクトの具体的な進め方は、前編でご紹介したオンライン学習環境についての実証実験でも実践していたUX調査からスタートし、大学内の受益者である学生と職員のペルソナ作成、ジャーニーマップの作成、インタビューというプロセスで進めていきます。

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柴崎 辰彦(シバサキタツヒコ)
香川大学客員教授 富士通株式会社にてネットワーク、マーケティング、システムエンジニア、コンサル等、様々な部門にて“社線変更”を経験。富士通で初めてのデジタル部門の創設やサービス開発に取り組む。CRMビジネスの経験を踏まえ、サービスサイエンスの研究と検証を実践中。コミュニケーション創発サイト「あしたの...
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