組織にCRMの定着化が進まない問題
SaaSであるSalesforceならば、導入すればすぐに活用できその価値を享受できると考える。ところがSalesforceに限らず、CRMのソリューションは、導入したもののなかなか使いこなせないことが多い。そのため「Salesforceの定着化をサポートする」サービスは、IBM以外にもNECやキヤノン、テラスカイ、WalkMeなどさまざまなベンダーから提供されている。
IBMを始めとする大手ベンダーにCRM定着化のサポートを依頼すれば、それなりに大きな費用が必要だろう。とはいえニーズがあるからこそこれらベンダーがサービスを提供しているわけで、ユーザーはそれなりに大きな投資をしてでもCRMを組織に定着させようとしている。
実はこのCRMの組織への定着化が進まない問題は、1990年代後半にあったSiebel CRMなどのCRMパッケージ製品の導入ブームの頃からほとんど変わっていない。そう指摘するのは、Vymo Japan 代表取締役 カントリーマネージャーで、元DataRobot ジャパン カントリーマネージャーの原沢 滋氏だ。
CRM、SFAの定着化を阻害する最大の要因は、営業担当者なりがデータをタイムリーにシステムに入力しないことだ。仮にデータを入れても、担当者ごとにデータの質がばらばらで、データにムラが出る。ムラがあり正確性に欠けるデータでは、それを活用して営業活動などを最適化することにつなげられない。
これは何も営業担当者が、仕事をさぼっているからではない。営業担当者は日々顧客に電話などでコンタクトをとり、メールも送れば訪問もする。優秀な営業ほど、顧客への対応で忙しいはずだ。そのような状況の中、新たにCRMが導入され面倒な日報や月報の入力を強いられる。
面倒な業務が増えたとなれば、積極的に情報を登録しないだろう。また購入してもらえそうな顧客とのやり取りは登録するが、上手く進んでいない商談情報は入力したくないとも思うはずだ。このようにCRMに意味のある情報がなかなか蓄積されない問題がある。
顧客行動を予測するには、上手く進んでいる顧客とのやり取りよりも、むしろ上手く商談が進んでいない情報のほうが価値は高い。今買ってくれない顧客が、数ヶ月後、数年後に購入してくれるかもしれない。商談が成立した結果だけを見ていても、買わなかった顧客が購買へと変化する状況は把握できないのだ。営業に関わる良い情報も悪い情報も、タイムリーに蓄積するためには、コストをかけてでも組織はCRMの定着化に取り組まなければならない。