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「ジョブ型雇用」の光と影、外資30年での私の経験を共有します!

edited by DB Online   2022/04/22 13:00

 国内のIT業界でも、日立製作所、富士通、NECなどが、「ジョブ型雇用」を採用し始めています。これは、年功序列型雇用を打破して、特に給与について、年功の社員の給与を抑えて、パフォーマンスを上げる若手に多く配分するのが目的だとも言われています。私は、考えてみればもう米国企業で30年働いており、「ジョブ型雇用」にすっかり慣れてしまっています。また、Microsoft、Cisco Systems、SAS Instituteでは、「ジョブ型雇用」を進化させるプロジェクトに関わりましたので、そういう経験を今回は共有したいと思います。

ジョブ型雇用はトレンド

 いきなりですが、昨年に発表されたコーン・フェリー社の調査を紹介します。

「コーン・フェリーは、昨年に引き続きジョブ型(職務型)人事制度の導入実態調査を実施した。調査は2021年4月~5月にオンラインにて実施され、117社から有効回答を得た。調査の結果、全参加企業のうち、現時点で既にジョブ型人事制度導入済み企業は28%。これに導入決定済/検討中を加えると全体の62%と過半数がジョブ型に舵を切っている(昨年度は導入済み企業26%、導入決定済み/検討中の企業を含め56%)。大企業(社員数1万人以上)に限れば、導入済み企業が37%、導入決定済/検討中の企業が78%と8割近くにまで達する(昨年度は導入済みと導入決定済/検討中を合わせた肯定的回答が66%)」とのこと。かなりのトレンド度合です。元の発表はこちら

 私が、「ジョブ型雇用」を初めて意識したのは、1993年に入社したMicrosoftの時でした。責任や必要なスキルなどのジョブ内容が明確になった社員の「枠」がポジションになっており、そのポジションに既存の社員や採用される新しい人が入ります。また、ポジションごとに給与の範囲が決まっています。場合によっては、別のポジションに移れば、給与が違うということも発生するのです。日本の終身雇用制のように、人に給与が付くのではないということです。当初は「これが外資なんだ!」「なんて厳しい世界だ」と思ったものです。

 ジョブ型の組織では、このポジションをベースに、ゴールや目的を達成するための予算の範囲や、必要人材の人数を考えて構成されていきます。ある意味、これが組織戦略になります。今後、新規に開発するビジネスや拡張するビジネスに、新しい役割が必要な場合、新規にジョブを開発します。決して硬直したモデルではありません。

 Microsoft、Cisco Systems、SAS Instituteで経験したのは、この進化です。外資は大体、人事のトップも転職をしますので、人事に関するベストプラクティスが転職先に持ち込まれて、同じようなことを実装していく傾向があります。まさにこれでした。何をしたかを列挙します。

ジョブの洗い出しから始まる

 まずは、必要なジョブの洗い出しです。ちなみに私がいるマーケティング組織は、細分化されており、かなりの数のジョブの種類があります。フィールドマーケティング、デジタルマーケティング、PR/AR、イベント、ブランド、ソーシャルメディア、オペレーション、製品マーケティング、コンテンツマーケティングなどです。そしてジョブごとにJD(Job Description:職務記述書)を作成しました。JDはどんなものかというと、そのジョブの概要と、そのジョブに要求される責任や役割と必要なスキル(とレベル)の種類を明確にするものです。LinkedInなどの外資の採用募集をみると、とても参考になります。そして、ジョブごとに、グレードの定義をしていきます。日本では職務レベルというのでしょうか、シニオリティともいいます。同じジョブでもグレードの上にいけば、責任やスキルなどの要求が高くなっていきます。もちろん、給与が高くなります。

 横軸にジョブの種類、立て軸にグレードがあり、階段のように見えるので、ジョブラダー(仕事の階段)とも言われます。そして、管理職と専門職では、ジョブの種類が異なります。キャリア開発とは、この階段をまっすぐ上るか、違う階段を斜めに上がっていくかになります。パフォーマンスが著しく悪い場合は、階段を下がることもあります。降格です。

 このジョブラダーのよいところは、上にいく、斜め上にいくときに(場合によっては横に異動)、どのような役割で、どのようなスキルが必要なのか分かり、それの準備ができるということです。マネージャとは、年に何回かそのような話をして、どこに行きたいのか、そして、そのために必要なスキルの開発をトレーニングやプロジェクトの経験を通して行います。「ジョブ型雇用」には、キャリア開発のロードマップが描けるという光があります。


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著者プロフィール

  • 北川裕康(キタガワヒロヤス)

    クラウドERPベンダーのインフォア(Infor)のマーケティング本部長。33年以上にわたりB2BのITビジネスにかかわり、マイクロソフト、シスコシステムズ、SAS Institute、Workdayなどのグローバル企業で、マーケティング、戦略&オペレーションを担当。その以前は富士通とDECでソフトウェア技術者。マーケティング、テクノロジー、ビジネス戦略、人材育成に興味をもち、日々格闘中。

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