ジョブ型雇用はトレンド
いきなりですが、昨年に発表されたコーン・フェリー社の調査を紹介します。
「コーン・フェリーは、昨年に引き続きジョブ型(職務型)人事制度の導入実態調査を実施した。調査は2021年4月~5月にオンラインにて実施され、117社から有効回答を得た。調査の結果、全参加企業のうち、現時点で既にジョブ型人事制度導入済み企業は28%。これに導入決定済/検討中を加えると全体の62%と過半数がジョブ型に舵を切っている(昨年度は導入済み企業26%、導入決定済み/検討中の企業を含め56%)。大企業(社員数1万人以上)に限れば、導入済み企業が37%、導入決定済/検討中の企業が78%と8割近くにまで達する(昨年度は導入済みと導入決定済/検討中を合わせた肯定的回答が66%)」とのこと。かなりのトレンド度合です。元の発表はこちら。
私が、「ジョブ型雇用」を初めて意識したのは、1993年に入社したMicrosoftの時でした。責任や必要なスキルなどのジョブ内容が明確になった社員の「枠」がポジションになっており、そのポジションに既存の社員や採用される新しい人が入ります。また、ポジションごとに給与の範囲が決まっています。場合によっては、別のポジションに移れば、給与が違うということも発生するのです。日本の終身雇用制のように、人に給与が付くのではないということです。当初は「これが外資なんだ!」「なんて厳しい世界だ」と思ったものです。
ジョブ型の組織では、このポジションをベースに、ゴールや目的を達成するための予算の範囲や、必要人材の人数を考えて構成されていきます。ある意味、これが組織戦略になります。今後、新規に開発するビジネスや拡張するビジネスに、新しい役割が必要な場合、新規にジョブを開発します。決して硬直したモデルではありません。
Microsoft、Cisco Systems、SAS Instituteで経験したのは、この進化です。外資は大体、人事のトップも転職をしますので、人事に関するベストプラクティスが転職先に持ち込まれて、同じようなことを実装していく傾向があります。まさにこれでした。何をしたかを列挙します。
ジョブの洗い出しから始まる
まずは、必要なジョブの洗い出しです。ちなみに私がいるマーケティング組織は、細分化されており、かなりの数のジョブの種類があります。フィールドマーケティング、デジタルマーケティング、PR/AR、イベント、ブランド、ソーシャルメディア、オペレーション、製品マーケティング、コンテンツマーケティングなどです。そしてジョブごとにJD(Job Description:職務記述書)を作成しました。JDはどんなものかというと、そのジョブの概要と、そのジョブに要求される責任や役割と必要なスキル(とレベル)の種類を明確にするものです。LinkedInなどの外資の採用募集をみると、とても参考になります。そして、ジョブごとに、グレードの定義をしていきます。日本では職務レベルというのでしょうか、シニオリティともいいます。同じジョブでもグレードの上にいけば、責任やスキルなどの要求が高くなっていきます。もちろん、給与が高くなります。
横軸にジョブの種類、立て軸にグレードがあり、階段のように見えるので、ジョブラダー(仕事の階段)とも言われます。そして、管理職と専門職では、ジョブの種類が異なります。キャリア開発とは、この階段をまっすぐ上るか、違う階段を斜めに上がっていくかになります。パフォーマンスが著しく悪い場合は、階段を下がることもあります。降格です。
このジョブラダーのよいところは、上にいく、斜め上にいくときに(場合によっては横に異動)、どのような役割で、どのようなスキルが必要なのか分かり、それの準備ができるということです。マネージャとは、年に何回かそのような話をして、どこに行きたいのか、そして、そのために必要なスキルの開発をトレーニングやプロジェクトの経験を通して行います。「ジョブ型雇用」には、キャリア開発のロードマップが描けるという光があります。