サプライチェーン変化へのレジリエンスを創る
小沢氏は、「現在も多くの製造業で原材料不足・高騰、燃料高騰リスクを挙げているように、不確実性が常態となっており、サプライチェーンにも『変化への対応力=レジリエンス』が求められている。加えて、2020年10月に『カーボンニュートラル宣言』が出され、ESGの観点から脱炭素など環境配慮も求められるようになった。サプライチェーンには複雑な管理が必要となり、より明確なデータや情報の取得・分析が求められている」と指摘する。
まさにサプライチェーンを含めた事業活動に対し、急速に影響力を増しつつあるのが、ESGの重視に伴う「カーボンニュートラルへの対応」だ。地球規模での温暖化が深刻な課題となる中で、2015年12月に採択された「パリ協定」では、すべての国が気温の上昇を2°Cまたは1.5°C以内に抑えることに合意。ドイツをはじめ欧米各国が早々に目標や施策を発表する中で、遅れ馳せながら日本も2020年10月に「2050年カーボンニュートラル達成」を宣言した。
とはいえ、日本の現状では2020年には温室効果ガス排出量はコロナ禍で減ったものの、「2030年に2013年比46%減」という中間目標も危うい状況だ。2050年の達成は相当に高い目標であり、排出量の34%を占める産業界には今後さらに厳しい対応が望まれる。小沢氏は「宣言直後から迅速な対応が求められ、ここ1〜2年で対応すべき課題としてリアルに落ちてくると思われる。もはや漠然とした社会の目標ではなく、各企業が対応すべき課題になりつつある」と訴える。
しかも、カーボンニュートラルは企業の内発的な課題感に基づくものというより、強力な外圧によって「対応しなければ経営リスクに結びつく課題」になりつつある。たとえば、英NGOでESGに関する情報開示システムを運営する「CDP」は、2021年に国内の上場企業500社に質問状を送付し、354社から回答を得てその内容を発表。2022年にはプライム市場上場1,841社に拡大しており、当然ながら低い評価を受ければ、経営にとってマイナス要素となる。また、金融安定理事会(FSB)が設置した気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は、企業の気候変動リスクに関わる情報開示についてガイドラインを提示しており、2021年よりプライム市場上場企業には開示を要請している。
さらに民間だけでなく、国もまた経済産業省とJPXによる排出量取引市場の実証実験を開始することを発表しており、それが導入されれば、各企業は自社の二酸化炭素排出量の割当が決められ、超過分は他から購入して穴埋めすることが必要になる。