サーベイはダメなマネージャーを追い出すチャンス!?
マイクロソフトに1993年に入社して、とても驚いた2つの社内の人事施策がありました。それは、マネージャーフィードバックとパルス(Pulse)サーベイの実施です。
マネージャーフィードバックとは、年に一度、テンプレートに沿って、直接の上司のフィードバックを、その上のマネージャーにフィードバックする仕組みです。マネージャーの良いところは伸ばし、改善すべき点は改善してもらうという方法です。
パルスサーベイは、外部の人事会社が提供しているサービスで、当時は年に1度でしたが、自分の組織のことや、会社や上司の満足度、本社の取締役も含めた会社全体を、詳細なアンケートに回答することによって、点数をつけて「見える化」するものです。測れないものは、改善できないですからね。ある一定以上の部下がいるマネージャーは、その組織のサーベイ結果が自分とマネージャーに公開されるのです。その上位の組織は、下位の組織の結果を含みながら点数化されていきます。それが当時のCEOのビル・ゲイツまで、上がっていくのです。パルスは脈の意味ですが、このサーベイによって、「組織の脈」が正常に動いているかを調べるのです。同じレベルの組織間の比較も調べられます。
その後務めたCisco、Workdayでも、このパルスサーベイはありましたが、WorkdayはさすがHCMの会社だけあり、さらに進化していました。年に一度のスナップショットの結果では効果がないということで、毎週金曜日に小出しにサーベイが実施され、それを累積して、四半期ごとに評価するのです。
マイクロソフトでは、口の悪い人(私?)が「年に2回、ダメなマネージャーを追い出すチャンスだ」と冗談で言うくらい、厳しい仕組みでした。マネージャーは、その時期、胃が痛い思いをします。私は、パルスサーベイは、すごく良い時と、すごく悪い時が極端でした。組織の成熟度やメンバーのモチベーションで、結果は随分変わるものです。
同じようにものに「360度人事評価」があります。これは、上司、部下、同僚、同僚の上司からの評価を得るものです。マネージャーフィードバックと同様に、組織というより、その人にフォーカスが当たったものです。その結果を、部下が対象なら、部下の改善点を、自分が対象なら、自分の改善点をマネージャーと話し合います。
こうしてリーダとしての能力が評価され、改善の必要がある場合は、改善プランを作り実行していくのです。自分の部下にマネージャーがいる場合は、この仕組みを使った、リーダシップ能力の向上をサポートします。ここで、「リーダシップ能力って何ぞや?」と思われる方も多いと思います。一般的には、人や変革をリードしていく能力ですが、実はグローバル企業では、その企業にとって必要なリーダシップ能力の明確な定義があり、また、身につけられるスキルとして位置づけられています。「もって生まれたもの」ではないので、ご安心を。その定義が明確なので、それに向かってスキルを身につけ、正しい振る舞いをすればいいのです。ただ、「自分を正しく見る」ということはなかなか難しく、また、部下が上司に改善点を言うのは難しいため、この2つの仕組みがあるともいえます。ですから、部下は、率直な評価をする必要があるのです(追い出すなどの邪念は禁物です)。