
栃木県下野市に本社を構え、独自技術で高付加価値製品を提供する材料メーカー「デクセリアルズ」。ソニーケミカルを前身に持ち、ノートPCや自動車のディスプレイの材料に用いられる反射防止フィルムや光学弾性樹脂では、世界シェア1位を誇る。だがそのデクセリアルズでも、これまで製造現場や社内では紙ベースでの作業が多く、DXにはほど遠い状況だったという。そんな中、現場が中心となって工場や社内のDX化を進めた結果、製品の生産性向上だけでなく、社内の意識も大きく変化したという。いったいどのような取り組みがあったのか。取材を通して、その要因に迫った。
スマート工場化への道のり
「弊社はとにかく、ニッチな分野にこだわっている企業ですね」と語るのは、同社経営戦略本部 DX推進部 担当部長の大河原秀之氏だ。

同社で近年、成長著しい主力製品となっているのが、ディスプレイの最表面などに貼られている「反射防止フィルム」だ。
これはノートPCや自動車のディスプレイ向けの材料であり、ディスプレイの視認性を上げて画面を綺麗に見えるようにする機能性材料だ。
近年では車載ディスプレイにも用いられており、視認性の向上だけでなく、万が一の事故の際、ガラスの拡散防止にもなるといった安全性の観点からも採用が拡がっている。特にここ数年ではコロナ禍による在宅勤務需要もあり、ノートPC向けの売り上げ増にともない、会社の事業でも大きな売り上げを占めているという。
ではこういった状況を予期してDXに動いていたかと言えば、そこには偶然もあったと大河原氏は話す。
「もともと今の反射防止フィルムの工場である栃木事業所は2015年に取得し、ここに新たな工場を作ろうということで、2016年から整備を進めて来ました。新しいラインをつくる上で、当時から話題にはなっていた『スマート工場を目指そう』ということで、生産計画やモノ、設備といった情報をつなげることをコンセプトにして取り組んできたという背景があります」

新工場では、設備の情報などもIoTで一元的に集約し、効率化・高品質化につなげることで製品の競争力を高めることを目指したという。
また、2019年同社の中期経営計画にて「進化への挑戦」が掲げられた際、経営計画の上でもDXへ本格的に着手するというトップからのメッセージが発せられた。
そして2020年、DX推進部という専門の部署が立ち上がり、同部署主導の下、全社を挙げてDXを進めていく体制が完成することになった。とはいえ、DX推進の組織が生まれたとしても、会社全体にそれを活かす文化がなければ有名無実化してしまう。
実際多くの企業でも、組織としてDX化を掲げるも、ただの意見表明にとどまってしまうことが多い。だが同社では、現場からの丁寧なヒアリングを通して、DXやスマート工場化の目的をきちんと明確化していったという。
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