紆余曲折を経てハイブリッドワークに至った、エムオーテックスの働き方の現在
「働く場所を問わずに、安全で快適な業務環境を実現する」を自社の働く環境のコンセプトに据えるエムオーテックス。
現在は413名の従業員に対して、週のうち在宅勤務は4日、出社は1日という形を自由に選べるハイブリッドワークを実践している。もちろん社外から自社システムへのアクセスはOK、クラウドサービスも利用しながら、必要なセキュリティはしっかり確保した業務環境を従業員に提供している。
エムオーテックス 経営企画本部 本部長 プロダクトマネージャー 中本琢也氏は「今の状態を、なかなか簡単には実現できませんでした」と語り、ハイブリッドワークを軌道に乗せるには紆余曲折があったことを吐露した。同社は、2020年4月、国内の緊急事態宣言発令を受けて急遽テレワーク体制を目指した。VPNのパフォーマンス不足、回線負荷の増加など課題はあったものの「とりあえず5日間で体制を準備したのは、今でも覚えています」と中本氏は振り返る。
その後、VPN不要のアクセスを導入、Zoomのライセンス追加、自社ファイルサーバーのクラウド移行、Microsoft 365の監査を進め、2020年内には全社でのフルテレワークを可能にする。
翌年2021年には、在宅4:出社1というハイブリッドワークを開始。当初フルで問題ないのだから、ハイブリッドも大丈夫と考えられていたが、中本氏は「出社が増えると社内でのビデオ会議やウェビナーの利用が増えて、自社ネットワークを圧迫という問題が発生しました」と新たな課題を明らかにした。
テレワークに関する一番の課題はセキュリティ
2022年、2年間の経験を踏まえて、中本氏はテレワークの課題をあらためて整理した。まず挙がった課題は、やはりセキュリティだ。総務省の「テレワークセキュリティに係る実態調査」(2021年1月)でも同じ結果が出ている。加えて中本氏は、同時期に進められたDXへの取り組みにおいて、推進の阻害要因のひとつに「データプライバシーおよびサイバーセキュリティに関する不安」があるというデル・コンピュータの調査報告を紹介した。
自社の経験や社会情勢を踏まえ、中本氏は「テレワークやハイブリッドワーク、DXの推進などで共通していることは、やはりセキュリティが大きな課題ということです」と指摘。それでは、セキュリティを重要視してシステムや社内環境を整えればよいのかというと、中本氏は「ハイブリッドワークやDXなどを進める上で、生産性の向上とセキュリティ、この両者のバランスが非常に重要と、私たちは考えています」と述べた。
もし生産性を優先したならば、当然ハイブリッドワークはOK、社外から社内へのリモート接続も仕事の効率アップにつながるからOK、様々なクラウドサービスも利用可能、さらに私用パソコンもOKにして、生産性をより高めることは可能だ。しかし現実は、多数のクラウドサービス利用は管理不徹底を生み、情報漏洩につながる可能性を生む。また私用パソコンは内部情報の持ち出しを容易にしてしまうなど、課題は多い。
逆にセキュリティを優先すると、在宅勤務は駄目、社内のリモート接続も駄目、クラウドサービスの利用も絶対駄目になる。こうなると生産性に大きなブレーキがかかるし、従業員のモチベーションも低下してしまう。