SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

直近開催のイベントはこちら!

EnterpriseZine編集部ではイベントを随時開催しております

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

週刊DBオンライン 谷川耕一

Kyndrylとハイブリッドクラウド戦略は、新生IBMの起死回生の一手となるか?

IBM Corporation シニア・バイスプレジデント ロブ・トーマス氏会見

 メインフレームやオープン化の時代にはIT市場をリードしていたIBMは、クラウド化以降はAWSやMicrosoftの後塵を拝している。SoftLayer買収などのクラウド戦略では存在感を示せず、AIブームの先駆けとなったWatsonも収益インパクトは薄く、現在では停滞感が拭えない。起死回生の一手は、Red Hat買収によるマルチクラウド戦略、そして起死回生をかけたマネージド・インフラストラクチャ・サービス事業でのKyndrylの分社化だ。ハイブリッドクラウドとAIへの注力、さらには業界大手の競合企業とも組むエコシステムの戦略について、同社のロブ・トーマス氏が語った。

IBM Corporation シニア・バイスプレジデント グローバル・マーケット担当 ロブ・トーマス氏

 IBM Zの起源であるIBM System/360が発表された1964年以降、IBMはメインフレームでIT市場をリードしてきた。その後のオープン化の流れにも、ハードウェアからソフトウェアへの転換やコンサルティングやアウトソーシングのサービス展開などで、引き続きIT業界で大きな存在感を示してきた。順調だったビジネスが躓くのが、クラウドへの転換だった。SoftLayer TechnologiesのIaaSビジネス買収までは良かったが、それを上手く活用できずAWSやMicrosoftの後塵を拝することとなる。

IBMはKyndrylを分社化してハイブリッドクラウドとAIにより注力する

 足踏みする中で新たに力を入れたのがビジネスのためのAIテクノロジー「Watson」だ。Watsonは、現状のAIブームの先駆けを作った存在と言えるだろう。しかし、クラウドと優秀なテクノロジーであるWatsonのかけ合わせが魅力的なものであっても、それですぐにIBMの売上が大きく上向くことにはならなかった。

 起死回生の動きとなったのが、2018年10月に発表したRed Hatの買収だ。オープンソースソフトウェアのビジネスをリードしてきたRed Hatの買収に、IT業界は大いに驚かされることとなる。IBMではこの買収をきっかけに、自社のクラウドサービスに拘るのではなく、柔軟なRed Hat OpenShiftのコンテナ技術を活用するハイブリッド、マルチクラウドの戦略に舵を切る。

 さらにIBMのグローバル・テクノロジー・サービス部門でSI事業やアウトソーシングなどを担っていたマネージド・インフラストラクチャ・サービス部門をKyndrylとして2021年9月に分社。この領域を切り離すことで、さらにハイブリッドクラウド、AI領域に注力する体制を整えた。ハイブリッドクラウドとAIは、過去10年、今後10年でももっとも大きなテクノロジートレンドであり、そこにIBMでは大きな投資をしていると言うのは、IBM Corporation シニア・バイスプレジデント グローバル・マーケット担当のロブ・トーマス氏だ。

 多くの企業では、データがあってもそれを上手く活用できていない。ここにAIを活用することで、データから価値を見出せる。またサイバーセキュリティの問題が増えており、複雑化するサイバーセキュリティ対策はもはや人手だけで対処するのは難しい。そのため「人間の能力をAIが補完することが重要です」とトーマス氏。さらにビジネスのための人的リソースが足りない中では、自動化も重要だ。ビジネスプロセスの自動化もAIでサポートする。

 その上で、多くの企業がモダナイゼーションを実施しビジネスに俊敏性と柔軟性を得るためにハイブリッドクラウドを活用する。パブリッククラウド、それを複数使うマルチクラウド、さらにオンプレミス、エッジを組み合わせて柔軟性と堅牢性、俊敏性をもたらすハイブリッドクラウド。Red Hatの技術を活用し、ハイブリッドクラウドをデザインし活用できるようにする唯一の企業がIBMとRed Hatであり「ハイブリッドクラウド、AIには大きなマーケットの需要があります。この需要は少なくとも今後10年は続くでしょう」とトーマス氏は言う。

 IBMの戦略は、データ駆動型で顧客自身がデータドリブンになること。意思決定でもビジネスプロセスの中でもデータを活用し、その上で自動化により新たな生産性を生み出す。AIを用いて、誰でも生産性を上げ効率化できるようにすることを提唱する。セキュリティにおいても、いかにしてAIを駆使して安全でしっかりした組織を構築できるか。それをIBMはサポートする。

 この戦略を実践する新生IBMには、テクノロジーとコンサルティングの2つの柱がある。ハイブリッドクラウド、AIを活用するには最新のテクノロジーが必要であり、それを使い企業がビジネスを変革する手伝いをするのがコンサルティングだ。コンサルティングでは、企業のビジネスプロセス変革の手伝いもすれば、単純にハイブリッドクラウド環境への移行などもサポートする。

 自動車メーカーのアウディでは、オンプレミスのデータセンターから、パブリッククラウドも利用するプライベートクラウド環境を構築し、OpenShiftの技術を駆使してワークロードを適材適所に配置するハイブリッドクラウドを実現した。その結果として、アプリケーションをモダナイズし、分析ワークロードではスピードが100倍になっている。

 その上でサーバー数を66%削減することもできた。これはAIOpsによりサーバーやストレージリソースの余裕、無駄を見直し、インフラを精査し最適化したことで実現されたものだ。サーバー削減でコストは減り、さらにエネルギー消費も減少している。「クラウドとAIOpsが上手く融合し、エネルギー効率を大きく改善できた事例です」とトーマス氏は言う。

次のページ
ハイブリッドクラウド、AIを推進するために欠かせないエコシステム

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
週刊DBオンライン 谷川耕一連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/16751 2022/10/11 06:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング