APIへの不安が日本企業のDXの足かせに
「日本企業はAPI攻撃への対策をさらに強化する必要がある」。こう指摘するのは、Imperva(インパーバ)のCTO クナル・アナンド氏。
ここ数年、ランサムウェア被害、標的型攻撃、サプライチェーンの脆弱性への攻撃、リモートワークなどのニューノーマルな働き方を狙ったサイバーセキュリティ攻撃などが増加し、企業は対応を余儀なくされてきている。こうした中で、見逃されがちなのが、企業アプリケーションの「APIの脆弱性」だとアナンド氏は言う。
Impervaはこれまでデータやアプリケーションの保護を中心にサイバーセキュリティ製品を提供してきた米国企業。2022年の1月にはForresterへの委託による調査結果を発表した。それによると、日本企業の74%が、機密データの悪用への不安、信頼できるAPIセキュリティの確保が出来ないことを理由に、APIの活用に二の足を踏んでいる。また日本企業の4分の1以上の26%が、現在稼働中のオープンAPIの数を把握しておらず、悪用される可能性があるエンドポイントを可視化できていないという結果が出ている。
その一方で、今後については、76%の日本企業が、自社の競争力を維持するために、内部や第三者APIを利用することが重要であると考えており、増加する予定だという。
アナンド氏は、こうした日本企業のセキュリティ動向を知るため、頻繁に来日している。2022年10月の来日は、金融機関などとのミーティングが目的だったという。
ボットによるAPIへの自動化攻撃が増加
アナンド氏が指摘するのは、APIへの攻撃が、ボットにより自動化され大規模化していることだ。
「いまや数ドル出せば、誰もがボット攻撃ツールをレンタルでき、企業にギガバイトレベルの攻撃を仕掛けることが可能です。Impervaは1ヵ月で1.5兆の顧客のHTTPリクエストを処理していますが、そのうち40%がボットによるものだと判明しています」
ボットとは、オペレーターの操作により、自動化タスクを実行するソフトウェア・アプリケーションだ。ボットによる攻撃は、企業のサプライチェーンにも及んでいる。昨年のlog4Shell攻撃はApache Log4jの脆弱性を悪用したボットネットによるもの。「米国の政府機関は33,000時間もその対策に費やしました。企業のCIOやCSOは、APIを保護するための対策に今すぐ取り組む必要があります」とアナンド氏。
日本企業にとって、APIを標的とする攻撃は大変深刻な課題だ。APIの普及の背景は、2つある。1つはDXの掛け声のもと、B2B パートナーやエンドユーザーに対してより多くのデータを公開し、データの参照にAPI を利用する機会が増えたこと。もう1つは、金融系や流通・小売系企業などのモバイルアプリケーションのサービスが増えたことだ。