フィッシング攻撃の最近の変化
メールによるフィッシング攻撃は、この数年で大幅に増加しています。2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大や東京オリンピックの開催によって拍車がかかり、ここ最近は高止まりの様相を示しています。こうした状況の中でも、サイバー犯罪者は常に手法を変化させ、ユーザーをだまそうとしています。
今一度、フィッシングメールとは何か確認しておきましょう。フィッシングメールとは、具体的には正規のサービスや組織などをかたってメール本文にあるリンクをクリックさせ、偽のサイトに誘導してログイン情報(IDとパスワード)を盗み出そうとするような手口を指します。ログイン情報が盗まれてしまうと、悪意のある第三者に不正にログインされ、サービスなどを悪用されてしまいます。
たとえば、本人になりすましてサービスにログインし、パスワードを変更されてしまえば、本人は自分自身のアカウントにログインさえできなくなってしまいます。また、複数のサービスでログイン情報を使い回すユーザーが多いため、犯罪者は入手したログイン情報で様々なサービスへのログインを試みます。
フィッシングにより入手されたログイン情報は、犯罪者の地下市場で売買されることもありますし、単純にログイン情報を必要とする犯罪者もいれば、本人になりすましてサービスを悪用することで、別のサイバー攻撃に活かそうとする犯罪者もいます。たとえば、Gmailなどにログインしてメールのやり取りを監視し、BEC(ビジネスメール詐欺)に悪用したりさえします。
そして近年のフィッシングメールの傾向では、これまで多様化していた悪用ブランドに変化が現れています。フィッシングに悪用されるブランドは、以前はゲームやオンラインバンキング、クレジットカードなどのサービスが多くを占めていましたが、その後はJCB、Amazon、楽天がほとんどの割合を占めるようになり、地方銀行や様々なクレジットカード会社やサービスなど、広範なブランドが悪用されるようになっていました。
もっとも、今年は再びブランド企業への集中化が始まっています。フィッシング対策協議会のレポートによると、2022年10月に報告された国内のフィッシングのブランドは、Amazonが全体の約20.9%、えきねっとが約20.4%となり、続くイオンカード、三井住友カード、国税庁、JCBを合わせると、全体の約74.3%を占めています。
Vadeのグローバルのフィッシングブランドに関する最近の調査でも、トップにFacebookがランクインし、Googleがそれに続いています。集中化の理由は、やはりユーザーの多いサービスのほうがだまされるユーザーの数も多いという判断だと考えられます。母数が大きいほうが効率的というわけです。
また、フィッシングメールは“ばらまき型”がほとんどですが、件名に特徴が見られるようになってきました。
これは、件名に「番号」や「メールコード」などの数桁の数字や文字列が記載されているものです。このようなフィッシングメールは以前も見受けられましたが、近年頻度が高くなっています。元々正規のサービスが個人を特定する意味で件名に付与しているものと考えられますが、それに似せているのか、あるいは犯罪者がフィッシングに引っかかったユーザーを特定するためなのかは現時点でわかっていません。