NECで出会った2人がLINEで合流
中村龍矢氏(以下、中村氏):竹之内さんとは前職の頃からプライバシーテックのお話しをさせていただき、髙橋さんとはLINEチームとして、私が所属するLayerXのチームでお会いしています。2人はLINEにおいてプライバシー保護などの研究開発で圧倒的な成果を出されており、何より日本の社会インフラの1つといえる大規模アプリケーション「LINE」への実装も進められるなど、今回は非常に勉強になると楽しみにしていました。まずは、経歴と現在の活動から教えていただけますか。
竹之内隆夫氏(以下、竹之内氏):最初に就職したのはNECで、実はそこで髙橋さんと既に出会っています。その後、デジタルガレージ社を経て、2022年5月にLINEにジョインしました。会社は変わりましたが、NEC在籍時から十数年にわたりプライバシー保護やセキュリティの技術の研究開発や事業開発に取り組んでいます。
プライバシー保護技術は、技術を導入するだけでは不十分ですし、同時に“100%保護できる”技術でもありません。さまざまな前提条件が必要で、技術以外にもたとえば法制度での補完なども必要です。そのため、技術の研究だけでなく法制度のことも少しずつ学習しているうちに、気がつけば両方のスキルを有している人材として、LINEに声をかけられて入社しています。
LINEでは、既に研究開発において髙橋さんなどのメンバーが高い技術成果を出していますが、私はその技術を社内に適用したり、社外にアピールして技術を広めたり、あるいは法制度関係の活動をしたりして、エバンジェリストのような活動をしています。
髙橋翼氏(以下、髙橋氏):私は筑波大学の修士課程を出た後に、新卒でNECの中央研究所に入りました。プライバシー保護に取り組んだきっかけは、修士課程でのWebマイニングの研究です。Webをクローリングしてデータを集めていたのですが、同級生から「プライバシー面は大丈夫か」と聞かれ、気にすべきだと思ったことが始まりでした。
当時NECが、経済産業省の「情報大航海プロジェクト」[1]に採択されたことを契機に匿名化の研究開発を始めた頃で、おもしろそうと思い応募しました。研究は続けていたのですが、残念ながらプライバシー保護技術が大きな事業としては実を結びませんでした。その後、2018年にLINEから新しくリサーチチームを作るという話をもらい、ジョインしました。
中村氏:なるほど、NEC時代からの縁だったのですね。今では少し求められている役割が異なりますが、2人で密にお話しされる機会も多いのでしょうか。
髙橋氏:つい昨日も2時間ほど話していますね。特にこの分野は未成熟で、何かをやろうとしても情報が少なく、自分たちで答えを出す必要があります。一人で考えた結論では正しいか不安になるため、できるだけチームで議論しながら進められる体制を作りたいと思っています。現在メンバーは5人いて、同じ領域における前提知識は共有されていますが、得意分野が少しずつ違うためいい刺激になっていますね。
[1] 参考:「『情報大航海プロジェクト』について」(経済産業省、PDF)