国産のクラウドサービスベンダーであるパイプドビッツ。その持株会社であるパイプドホールディングス(以下パイプドHD)は、昨年マネジメント・バイアウト(MBO)による株式の非公開化を実施。22022年10月に東京証券取引所スタンダード市場から撤退し、上場廃止となった。DXやSaaSの波を受け、業績は堅調に成長していたにも関わらず、あえて非上場の道を選んだパイプドHDグループ。その背景にはどのような戦略があるのか、パイプドHDの広報責任者とパイプドビッツのCEOに話を聞いた。
飛躍的な成長をめざすための上場廃止

システム開発企業パイプドビッツは、PaaSを中心にしたプラットフォーム事業と、ソリューション事業の2本柱で展開してきた。ローコード開発ツールの「スパイラル(SPIRAL)」は、専門性不要のWebシステム開発ツールとして、官公庁や金融分野をはじめ多くの民間企業に導入されている。ここ数年のコロナ禍によるデジタル化需要を背景に堅調に事業を展開してきたが、親会社のパイプドHDは2022年の10月に上場を廃止した。パイプドビッツとしては、2006年のマザーズ上場、2014年の東証一部への市場変更と続いた上場企業としての看板を降ろしたことになる。パイプドHDの広報部門はその背景をこう語る。
「コロナが急拡大した時期に社長の佐谷が社内で話していたのは、医療の次くらいにITが期待されているということ。この時代に長期的に成長していくためには、もっとギアを上げていかなければいけない。そのための大胆な投資をおこなうために非公開化という選択をしました」(パイプドHD 広報部門)
投資の目的は、SPIRALの製品開発やサポート人材への投資、SPIRALに次ぐ「第2の柱となる製品の創出」、海外マーケットへの進出やパートナー開拓などだ。こうした取り組みはこれまでも行ってきたが、「リニアではなく飛躍的な成長のための投資」(同氏)となると、短期的には株主の理解を得ることが難しいという判断だった。
「再上場の可能性はあるのか」を同元執行役員に訊くと、「株主の意向について我々は言及する立場にないが、一般論として上場はファンドのイグジット手法として最もメジャーな選択肢の1つではないか」(同氏)という。
パイプドHDがMBO(経営陣による株の買取)による株式非公開化を発表したのは2021年。その年のTOB(株式公開買い付け)は不成立に終わり、2022年にアドバンテッジパートナーズ傘下のミライサイテキグループによる買付が成立した。新体制では、営業面に強い取締役(小見山茂樹氏)や人事制度に明るい執行役員(八木康夫氏)を新たに招いた。
「成長路線に合意したものだけが株主になることで、経営の安定化、成長路線を加速化させ、改革にドライブをかけることができる」と同氏は言う。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
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