社内ITでも「自前主義」を徹底
ニトリは、商品開発から販売、配送までを一気通貫で行っている。家具配送も自社でしており、年間約275万件(2022年2月期)にのぼるという。同社は、自らのビジネスモデルを「製造物流IT小売業」と称している。
そんな同社は「自前主義」を大事にしている。それはITにおいても変わらない。独自のビジネスモデルを支える基幹システムは、フルスクラッチで作られたものを運用しているのだという。荒井氏は同社の内製IT部門の特徴として、IT技術の知見だけでなく、業務にも精通していることを挙げる。「業務理解があるメンバーがシステム開発を担当することで要件定義が早く、あるべき姿から逆算したシステムを構築・提案することができます」と話す。
内製開発する部門を抱える同社のプラットフォームでは、毎日平均7.5件のリリースをするスピード開発も特徴だ。一般的なベンチマークと比べて、同社の開発工期とコストは約3分の1に抑えられているのだという。可能な限り、IT構築では上流から下流までを社員自らが行うことで、ノウハウを社内に蓄積している。
23年続く基幹システムの内製は「第3フェーズ」に突入
同社の基幹システム内製の歴史は1999年に遡る。以前はパッケージシステムを採用していたが、コスト削減を目的に内製の基幹システムへ刷新した。その後、事業拡大にともない2014年には、基幹システムのデータベースをIBMの大型UNIXサーバーに集約。仮想サーバーを導入し、より堅牢なシステムを実現した。2015年からAmazon Web Services(AWS)の利用を開始し、2022年にはGoogle Cloud Platform(GCP)上にデータ分析基盤を構築すると、現在はマルチクラウドで事業領域の拡大を支えている状況だ。
クラウドを利用するにあたり、ニトリでは2015年にまず「クラウド利用規約」を作成した。荒井氏は「インフラ部署はこれまで担当領域を容易にコントロールできていましたが、クラウドでは開発者側にIaaSやPaaS、SaaSの仕組みをどんどん開放していくことが重要だと考えていました」と振り返る。ただ、野放しに開放するのではなく、実効性のある規約づくりを重視した。
具体的にセキュリティでは、Active Directory連携や二段階認証、アイデンティティ管理の取り扱いを予め決めておいたという。予算管理では、しっかりROI(投資利益率)が出ているか、出ていないかを検証することも徹底した。すべてのリソースに“稟議番号”をつけ、それをベースにグループ集計。管理会計システムに連動して実際の経費ベースで効果を検証できるようにしている。