CIO Lounge 矢島氏:なぜ日本の経営サイドにはCIOが不在なのか
DXが注目される中、IT部門のマネージャーや担当者に求められる役割は変わってきたのか。自身もCIOを経験し、CIO Loungeの理事として多くのCIOに会っている矢島氏は、求められるものの変化は大きいと言う。ここ2、3年、企業はもちろん教育機関や自治体などさまざまな組織でデジタル化が進んでいる。オンライン化が進み、スマートフォンなどのデバイスも当たり前となった。経営者もデジタルの活用は進んだと認識する。しかし調査結果などを見ると、日本のデジタル競争ランキングは毎年のように後退している。結果的に日本経済は世界で負けている。
1970年代以降のITの変遷を見ると、最初は表計算やワープロなど個人のIT化が進み、1980年代くらいから経理などの組織のIT化が進んだ。2000年頃からはSAPのようなERPの導入が進み、エンタープライズレベルでデータとプロセスを統合する動きが出てくる。エンタープライズレベルのシステムの統合化を進めてきたが、「戦後から今まで、日本の組織は縦割りで何ら変わっていません」と矢島氏。ところがデータやプロセスは横串に指して見ていかなければならない。そのため経営者はIT部門担当者にどんどん統合しろと言うが、CIOやIT部門長は組織のマネジメントを統合する権限もない中、システム統合だけを指示され進める。これが日本の実体だと言う。
かつて総務部がIT部門の業務を兼務していたが、2000年頃からは対処しきれずにIT部門ができた。それ以降、倉庫や工場、物流などOT(Operational Technology)の世界にITを連携させ、開発や設計、CAD/CAMなどまでITと連携させることとなる。これすらまだできていない企業もあり、そういうところは競争から遅れている。
「ヤンマーのCIO時代、CAD/CAMや部品表の再統合をしましたが、そこでは情報システム部門が全て予算を管理しました。通常、開発や製造部門が管理することも多いのですが、そうするとたとえば開発部門だけのIT化、デジタル化になります。部品表やCAD/CAMのデータは営業やサービス部門でも使っていくものなので、IT部門が主導したのです」と矢島氏。もともと部門でやっていたことをIT部門に移した、コストが上がっただけではとの疑問も出たとのこと。本質であるさまざまな部門でデータを活用できるようにする価値を、理解してもらえないこともあったと振り返る。こういったところが、組織におけるITマネジメントにおける大きな課題だと指摘する。
また、CIO Loungeには多くのCIOが参加しているが、多くは執行役員、常務執行役員などの肩書きで、取締役CIOはほとんどいない。ボードメンバー側にCIOが入っていないのは、ITリソースを全て横串で見ていかなければならないのに、日本ではそれができていないことの表れだろうとも言う。