富士通 福田氏:縦型の組織、やり方、システムを全て横型にする
富士通は顧客からのさまざまなリクエストに対し、ICTで答えるビジネスモデルを提供してきた。とはいえ従来のやり方では、立ちゆかなくなってきており、ビジネスモデルを変革しようとしている。「世界で通用する7つの事業領域を決め、サービスをきちんと構え世界に等しく提供していく。それが富士通の仕掛けるビジネスモデルの変革になります」と福田氏は言う。個別の顧客と密接な関係を作ってきた縦のチームの集合から、7つの事業ドメインのチームで世界に存在感を示せる会社になろうとしている。
富士通では、これまで「社員が今何人いるか?」と問われても答えられなかった。これは連邦経営で、400社を超える連結子会社がそれぞれに経営を行い、最終的な数字は月末に集計するような方法をとってきたからだ。「富士通の競合は、そのようなことはしていません。世界統一ブランドのもと、世界で均一なサービスを最適地から提供している。したがって彼らと競争力が全く違うのが、残念ながら実態です」と福田氏。
そのため、縦型のグループ会社、地域で個別に頑張るビジネスモデルから横型に切り替える。それにより、世界で1つの富士通になる。そのために社長をリーダーとする「One Fujitsu」というプログラムで改革を進めている。このOne Fujitsuの中でIT部門に期待されているのが、縦方向の業務や人の管理、人の意識などを横に倒すこと。世界で1つの人事業務プロセスを人事部と一緒に作り、世界で1つの人事システムを導入する。また世界中の営業部門と共同して、世界で1つの営業モデルを作り1つのCRMを構築する。他にも世界で1つの決算業務プロセス作りに取り組んでいる。
富士通にはこれまで、4000を超える業務アプリケーションが散在していた。それらの維持に大きな手間をかけてきた。人事関連システムも400を超え、個別に決済を締めそれらを連結するためのシステムもあった。その中では膨大な手作業での消し込み作業もあった。One Fujitsuが進めば、たとえば日々PL(損益計算書)を出せ、今何人従業員がいるかもすぐ分かるようになる。
また、従来の富士通は予算権限がビジネス側にあった。たとえばセキュリティ事故を防ぐために全てのアプリケーションに多要素認証を入れようとしても、国によっては今期業績が良くないので対応できないとなる。ならば予算に対する権限も全て中央化し、個々の権利を剥奪、責任をとらなくて良くする。他にも部門を統合し1つの人事システムにしても、国ごとに組織があり人事担当者がいて、彼らがそれぞれの国のCIOにレポートするのでは都合が悪い。組織も全て、横型に作り直す必要がある。
これらを進める際に、どこを世界標準にしてどこからローカライズするかを間違えないようにしたい。これには富士通の業務を331のブロックに分割し、ブロックごとに標準化とローカライズの範囲を決めている。主導するのは経営側で、現場業務部門とIT部門でのディスカッションで決めることはしていない。「それをしてしまうとIT部門が言うことを聞き、個別システムの山となります」と福田氏。一方でビジネスに近いところは、なるべく好きに動けるようにする。この両方が共存するアーキテクチャを目指している。
富士通の取り組みは、10年はかかる話だ。上手く進めるには、全体像がどうなるかを明らかにするのが出発点となる。そのためには、Technology Business Managementを実現するApptioのようなサービスが必要だと言う。それにより投資の基準や考え方を明らかにし、セグメントごとのコストを把握、ベンチマークで他社との比較もできるようになる。
富士通のように、縦のものを横にするのはなかなかできるものではないと矢島氏は指摘する。実際に取り組むのはかなり大変だが、富士通のアプローチはエンタープライズ企業にとってはリーズナブルなものだろうとも言う。