大規模言語モデルとナレッジグラフを活用したインサイトエンジン
アシストは、企業向けにインサイトエンジン「Glean(グリーン)」の提供を開始する。同社はデータベースやBIなどデータ活用ソリューションに強いイメージがあるが、それ以外にもITサービスマネジメントやセキュリティ、ローコード開発ツールやWebサイト構築など幅広い領域の優れたソフトウェアを見出し、市場に展開している。
そんなアシストは、2022年に50周年を迎えた。ここ最近も主力のデータベース関連など既存ビジネスは順調だ。その上で、今後の50年を見据え、新たなビジネス基盤を確立するための中期経営計画もスタートしている。計画の一環として、2023年からは開発のビジネスも手がける。さらに「新たな収益モデルになる製品として、SnowflakeとGleanを扱います」と言うのは、アシスト DX推進技術本部 本部長執行役員 田畑哲也氏だ。ここ最近クラウドにも力を入れているアシストが、クラウド上のデータ活用プラットフォームに新たにSnowflakeを選んだのは興味深い。
もう1つのGleanは、GoogleでサーチエンジンのエンジニアをしていたGlean Technologies社の創業者でCEOのアルビンド・ジェイン(Arvind Jain)氏が、仕事をしている中で欲しい情報がなかなか見つからない、どこにあるか分からない、誰に訊ねれば良いかが分からないといった課題を解決するために開発したものだ。
Glean Technologiesは2019年に創業。最初の2年間は大規模言語モデルなどの開発に費やし、さらに80以上のコネクタを開発した。それにより業務で利用するさまざまなアプリケーションのデータに、迅速かつ効率的に賢くアクセスできる仕組みとなった。「情報を探すのに大きな課題があります。何らか情報を探すために、1週間で6.5時間も費やしているとのデータもあります」と言うのは、Glean Technologies APAC統括責任者のウィリアム・ヒーバート(William Hiebert)氏だ。この従業員の無駄な仕事をなくして効率化するのが、Gleanだ。
Gleanには、ナレッジグラフと最先端のAIを使った大規模言語モデルがある。これらを使いすぐに社内のどこにどのようなデータがあるかを理解し、必要な情報を従業員にパーソナライズして提供する。大規模言語モデルは日本語を含む多言語に対応する。既に米国を中心に120社以上の企業が利用しており、アジア地域にも広がっている。Glean Technologiesのビジネスは急成長しており、ここ1年で売り上げ規模は4倍、ユーザー数は10倍に増えている。
そして「日本市場での最初の顧客が、アシストでした。そのアシストとパートナーシップを結び日本でビジネスを展開します」とヒーバート氏。アシストはユーザーとしてGleanを経験し、その上でパートナーとしてGlean Technologiesと協業し日本市場を開拓する。
またGleanにとって「セキュリティをどう担保するかが重要な課題です」とヒーバート氏。社内の重要な情報も探し出し、適切な権限のある人にだけそれを提示できなければならない。Gleanは、扱うデータに対するアクセス権の管理ももちろん可能だ。さらにSOC 2(Service Organization Control Type 2)などのセキュリティ基準などにも積極的に対応している。
今回日本で提供するのはGlean Searchの機能で、パーソナライズされたビューでユーザーが必要な情報をアクセスコントロールした上で提示する。また新たな機能としてGlean Chatも準備している。これはChatGPTのような生成AIの技術を活用したもので、対話形式で必要な情報が得られる、さまざまな業務アプリケーションの情報をまとめた「ワークプレイス用のChatGPTのようなものになります。生成AIとナレッジグラフの技術を用い、信頼性の高い情報を提供します」とヒーバート氏は説明する。現状Glean Chatはベータ版で、アシストがテスト中だ。