2023年6月26日、アマゾン ウェブ サービス ジャパンは、「ITトランスフォーメーションパッケージ」に関する記者説明会を開催した。
多くの分野においてAWSの採用が増えている中、システム移行などにおいて技術的課題・非技術的な課題が混在しているとして、同社執行役員 事業開発統括本部長を務める佐藤有紀子氏は「日本独自の取り組みとして、複数のプログラムから構成される『AWS ITトランスフォーメーションパッケージ(ITX)』を2021年から提供している。DXにおける大規模なマイグレーションという複雑かつ長期にわたるプロジェクトを早期に軌道に乗せられている」と話す。
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ITX提供から約2年間で170社以上が採用しており、2023年4月には最新版「AWS ITトランスフォーメーションパッケージ 2023 ファミリー(ITX 2023)」として提供されている。ITX 2023では、クラウド移行プロジェクトの支援はもちろん、アプリケーションのクラウドネイティブ化支援のパッケージ「ITX for Cloud Native」、パートナーとの連携を拡張した「ITX for MCP Partner」、中小規模向けに「ITX Lite」を追加して、よりニーズに沿った形で支援を続けていくという。

佐藤氏は、下図のように3つのステージに分類されたクラウドジャーニーの道程を示すと、「リフト&シフトによる2ステップ、オンプレミスや他社クラウドからクラウドネイティブ環境に1ステップで移行するという大きく2つの選択肢がある。どちらが優れているということはないが、クラウドネイティブ化によりインフラコストの削減、生産性の向上など明確な効果が現れている」と話す。
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たとえば、「クラウド戦略策定ワークショップ(MSW:Modernization Strategy Workshop)」では、AWSにリホスト済のオープン系システムやマイグレーションを視野に入れた大規模システムなどが対象となり、約4週間にわたる「アーキテクチャ計画支援(MODA:Modernization Assessment)」などでサポートするという。なお、「ITX 2023 for MCP Partner」については、既にSCSKが複数社との検討段階に入っているとした。

続いてビックカメラ 執行役員 デジタル戦略部長 野原昌崇氏が登壇すると、「メーカーと小売り、双方による複合寡占状態という閉鎖的な文化がある」とDXに踏み切った理由を説明。たとえば、ホームセンターやドラッグストアでは出店戦略が成否を握っている一方で、家電量販店だと販売員レベルが足りなければ売り上げが創出できない現状があるという。「他の小売業よりもDXが未開拓、だからこそDXが効きやすい」野原氏は指摘する。
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そこで同社は顧客起点のビジネスを再構築していくため、昨年「ビックカメラDX宣言」をリリース。DXにおいてAWSを全面採用し、システム内製化やOMO戦略、基幹システムのモダナイズなどに取り組むとしている。たとえば、下図のように来店から購入までのフローについて、クラウドだからこそのスケーラビリティ、柔軟性を活かしてアジャイルに仮説検証していけると話す。
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また、2023年秋にはAWS環境へと基幹システムのリフトが完了するとして、将来的には基幹システムを小さくしていき、物流など重点を置くべき部分などを充足する2ステップでの戦略を策定しているとした。
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会見の最後では、佐藤氏と野原氏が対談してAWS活用のメリットなどを意見交換。「クラウドの良いところは、すぐに始められて、直せて、止められるところ。どれだけ仮説検証を早く回せるかが鍵になってくる」と野原氏が述べると、佐藤氏は「システム移行後のオファリングなども用意しているため、ぜひクラウドネイティブ化に協力していきたい」と話して会見を終えた。
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ビックカメラ 執行役員 デジタル戦略部長 野原昌崇氏
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