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ホールディングスはどうやって横断的データ活用を実現しているのか 複数企業を束ねるための組織とその役割

【デタマネ対談 01】異なる組織、企業間のデータガバナンスを考える(前編)


 データマネジメントの実行は難しく、企業内に分散するデータを「分析・活用が可能なデータ」へと変えるための組織全体の協力が必要だ。まして異なる文化やリテラシーの複数企業を束ねるホールディングス(持株会社)の立場であれば、さらに困難となる。傘下の企業のニーズを調整し、データ活用のガバナンスを確立するためには、どのような取組みが必要か──この課題について、JDMC会員の2社のデタマネ(データマネジメント担当者)が語り合った。バンダイナムコネクサスの吉村武氏と、Zホールディングス兼Zデータの横井公平氏による「ホールディングス企業のデータマネジメント」についての対談をお届けする。 企画協力:日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)

ホールディングスで横断的データ活用をするための組織の形

バンダイナムコネクサス データ戦略部 データストラテジーオフィス データマネジャー 吉村武氏Zホールディングス株式会社 GCDO室 兼 Zデータ株式会社 経営企画部 横井公平氏
(左)株式会社バンダイナムコネクサス データ戦略部 データストラテジーオフィス データマネジャー 吉村武氏
(右)Zホールディングス株式会社 GCDO室 兼 Zデータ株式会社 経営企画部 横井公平氏

横井氏:吉村さんは、ホールディングスのデータ活用を推進する上でどんな役割を担っていますか。

吉村氏:私が所属するバンダイナムコネクサスは、バンダイナムコホールディングス(以下、バンダイナムコHD)傘下にあるバンダイナムコエンターテインメントの100%子会社で、ホールディングス傘下の3つのユニットを含めたグループ会社全体を横断したデータ活用を行うための機能会社という位置付けです。

 バンダイナムコグループは「エンターテインメントユニット」「IPプロデュースユニット」「アミューズメントユニット」という3つのユニットで構成されており、それぞれデジタル系・トイホビー系、映像・音楽コンテンツ系、アミューズメント系の事業会社が紐づいています。

出典:バンダイナムコホールディングス
出典:バンダイナムコホールディングス

 バンダイナムコグループでは、経営計画の重点戦略の1つとして「IP軸戦略」を掲げています。これは、グループが取り扱うIP(バンダイナムコグループではキャラクターなどの知的財産を指す)を、3つのユニットを横断して価値を最大化させていこうという戦略で、そこでデータを積極的に活用していく計画です。

 バンダイナムコネクサスには、このグループ全体でのデータ活用を支援する部署があり、私は主にデータマネジメントとデータガバナンスを担当しています。横井さんは、ホールディングスのデータ活用を推進する上でどんな役割を担っていますか?

横井氏:私が所属するZデータは、Zホールディングス傘下の事業会社が持つデータを、横断的に活用するためのデータガバナンスやデータマネジメントを推進しています。

 Zホールディングス傘下には、ヤフー、LINE、PayPay、一休、ZOZO、アスクルなど、さまざまな業種のグループ会社があり、グループ全体で200超のサービスを展開しています。グループの国内総利用者数は、のべ3億に達しています。

 AIテックカンパニーを目指しているZホールディングスでは、各事業会社間のIDやデータをつなぎ、AIをフル活用してグループのシナジーを最大化することで、ユーザー体験の向上を図っていこうとしています。

 それを推進するために、GCDO(グループチーフデータオフィサー)のもと、グループ会社のデータマネジメントとデータガバナンスを手がけています。

ホールディングスだからこその横断的データ活用の価値とは

横井氏:ホールディングスにデータガバナンスが必要な理由を考えるには、そもそも、なぜ事業会社の集まりである「ホールディングス」という形でビジネスを行っているのかを理解しておく必要がありそうです。

吉村氏:そうですね。なぜかというと、個別の事業会社だけでは成し得ないシナジーを生むためだと思うんです。

 例えば、私が所属しているバンダイナムコグループでは、キャラクターなどの知的財産、いわゆるIPを中心にアニメやトイホビー、ゲームなどを扱う各事業会社との間でシナジーを最大化する「IP軸戦略」を推進しています。

 バンダイナムコグループ全体としてシナジーを出す方法の1つとして、アニメーション作品などのIPを軸に、トイホビー、ゲーム、アミューズメントなどの最適な商品・サービスとして最適なタイミングで展開するというものがあります。

 たとえば、最近では「機動戦士ガンダム 水星の魔女」(以下、水星の魔女)の第2シーズンがスタートして盛り上がっていますが、グループ全体として、IPが最も盛り上がっている時にトイホビーやゲームなどをリリースするよう戦略を立てます。

 もちろん、これまでもバンダイナムコグループ内の事業会社が集まるミーティングを通じて、シナジーを最大化するための連携を図ってきましたが、ここにデータの裏付けがあれば、それがIP戦略の羅針盤のような役割を果たすことになります。

 グループと事業会社の経営戦略をデータで支え、シナジーを最大化していくためには、各社の持つデータを相互にやり取りしてさまざまな角度から分析し、戦略を考えていく必要があります。こうした施策をスムーズに行うためには、グループとしてのデータガバナンスが欠かせないと考えています。

横井氏:なるほど、各事業会社もデータガバナンスやデータマネジメントに取り組んでいるわけですが、事業会社を横断した戦略を遂行する際には、ホールディングスが全体のデータガバナンス担当としての役割を担う、ということですね。

吉村氏:おっしゃる通りです。一般的に、事業会社を横断したデータ活用の取り組みをする際には、活用の方向性を明確にし、データをやり取りする際の条件をそろえる必要がありますから、ホールディングスがグループ全体のデータガバナンスに取り組む必要があります。そうしないと、事業会社間で認識のズレが出てしまうことがあるんです。

 バンダイナムコで例えると、事業会社横断で「ガンダム」のプロジェクトを推進する時に、「ガンダム」がガンダムシリーズ全てを指すのか、「水星の魔女」を指すのかを定義しておかないと、会話が噛み合わなくなりますよね。このように事業会社間で異なる部分の認識を合わせ、データをやり取りする上での決めごとを整えていくのが、グループのデータガバナンス担当者の役割だと考えています。

横井氏:たしかに「ガンダムシリーズ」のデータを集めるのと、「機動戦士ガンダム 水星の魔女」のデータを集めるのでは、だいぶ違いますよね。

 私たちZホールディングスの場合、ヤフー、LINE、PayPay、アスクル、一休、ZOZOなど、傘下の事業会社における事業領域が異なる中で、どのようにデータ活用の共通目標を定めていくか、という難しさがあります。

 その意味では、バンダイナムコグループさんは、ホールディングスといえど「一枚岩」なのかなと思っていたのですが、やはり外からは見えない難しさがあるということですね。

吉村氏:そうですね。ホールディングス会社のデータガバナンスは、ホールディングス会社全般に共通の課題もあれば、異なる課題もあると思います。例えば弊社グループに限らないホールディングス会社共通の課題でいうと、多額の予算を持っている事業会社の意見が強くなりがち、という話はよく耳にしますね。

次のページ
傘下の企業を束ねるデータ活用に必要な組織と役割

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この記事の著者

後藤 祥子(ゴトウ サチコ)

フリーランスの記者、編集者。前職のアイティメディアではITmedia エンタープライズの担当編集長としてメディア運営のほか、特集企画、記事執筆、タイアップ企画、セミナー企画、情シス コミュニティー「俺たちの情シス」の運営などを担当。現在は、実務者が知りたい情報を実務者の視点で提供するメディア「Darsana」の編集長としてイベント企画や取材を行うとともに、各種メディアでインタビュー企画や記事執筆を手がけている。信条は、変化の時代に正しい選択をするのに役立つ情...

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