変革に向けてまずは経営理念を刷新
東京ガスは1885年に創立された。液化天然ガスを調達して電気、ガスを製造し、顧客に届けている。創業時はガス灯の事業を展開していた。その後、将来需要を見据えて熱源事業へ転換。1969年には日本で初めて液化天然ガスを導入した。2016年に電力が全面自由化されると電力の小売販売を開始。2019年には国内エネルギー企業初の「CO2ネット・ゼロ宣言」をした。近年は再生可能エネルギーにも取り組んでいる。
このように東京ガスグループはその時々で事業の変革を起こしてきた。しかし、創業から約140年間、ビジネスモデルは大きく変えていないという。菅沢氏は「22-25年中期経営計画ではビジネスモデルを含めて大きく変革していきたい」とし、その戦略について説明した。
初めに取り組んだのが、経営理念の見直しだ。理念を決める際は、東京ガスグループの社会における存在意義は何かということを議論した。そして「人によりそい、社会をささえ、未来をつむぐエネルギーになる。」を新理念に決定。これには、東京ガスグループ従業員が何を大切にして行動するのかを示した4つの価値観「挑み続ける」「やり抜く」「尊重する」「誠意をもつ」も反映されている。
中期経営計画で打ち出す「3つの主要戦略」
22-25年中期経営計画では3つの主要戦略を掲げている。1つ目がエネルギーの安定供給と脱炭素化の両立だ。
「私たちは天然ガスを輸入している立場なので、ロシア・ウクライナ戦争が始まり大変大きな影響を受けました。エネルギーの安定的な調達もさることながら、価格自体も非常に大きく変動します。先が見通しにくい時代の中でも、安定的にエネルギーをお客様にお届けするという我々のミッションは変わりません」(菅沢氏)
脱炭素化は、すぐにマネタイズできる事業ではない。しかし、早く事業化して周知していくことが大事だ。菅沢氏は、エネルギーの安定供給と脱炭素化を両立していくことが重要だと説く。
2つ目はソリューションの本格展開だ。東京ガスグループは電気とガスの事業を2本の柱としているが、それに次ぐ第3の柱がソリューション事業となる。GX・DXの取り組みを取り入れたソリューションをブランド化し、顧客の課題解決に資するソリューションを提供・拡充していく。
3つ目は変化に強いしなやかな企業体質の実現だ。DXによるビジネスモデル変革や生産性向上に取り組むとともに、人的資本経営や財政基盤強化により市場ボラティリティや不確実性への耐性を向上させる。