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新規事業がけん引するDNP、「第三の創業」を目指して“変化に対応しやすい”システム構成を模索中

第14回:大日本印刷 情報システム本部 デジタル変革室 室長 塩崎美恵さん


 2019年・2020年・2023年に「DX銘柄」(旧「攻めのIT経営銘柄」含む)に選定された大日本印刷(以下、DNP)。紙の印刷事業が縮小する一方で、有機ELディスプレイ製造用メタルマスク、ディスプレイ用光学フィルム、リチウムイオン電池用バッテリーパウチといった製品は世界トップシェアを獲得している。いわゆる“両利きの経営”を体現する存在と言えるだろう。ドラスティックなビジネス変革を支える情報システムのあり方とは。情報システム本部 デジタル変革室 室長の塩崎美恵さんに聞いた。

8ヵ月で大規模基幹システムのクラウド移行を完了

塩崎美恵(以下、塩崎):DNPは現在、明治時代の創業と、戦後の事業領域拡大を超える「第三の創業」を掲げ、抜本的なビジネス変革を進めています。ビジネス変革を進めるには、それを支える基盤の強化が不可欠です。しかし、実際には自社開発の古い基幹システムがオンプレミス環境で多く残っていて、拡張性・柔軟性・堅牢性の面で課題を抱えていました。

 直近では、これらのシステムをクラウドに移行することが、私たち情報システム本部の大きなミッションでした。2022年11月までの約8ヵ月で、7台のサーバーで構成された統合データベース基盤と、約600台の仮想サーバーが稼働する業務アプリケーション基盤を移行し、基幹システムのクラウド移行を完了させました。従来のオンプレミス環境と比較して、TCO(総保有コスト)は、約3割削減できる見込みです。

酒井真弓(以下、酒井):わずか8ヵ月で! すごいですね。DNPは2017年にクラウドを使い始め、現在はAWS(Amazon Web Services)、Microsoft 、Google Cloud、Oracle Cloudのマルチクラウド環境で、720以上のシステムが稼働していると聞いています。社内にクラウドのノウハウが蓄積されていたことも、短期間での移行につながったのではないでしょうか。

塩崎:クラウド移行の「リフト&シフト」で言うと、今はまだリフト。アーキテクチャを変えただけの状態です。クラウドならではのスピードや柔軟性で真に事業に貢献していくには、まさにここからが本番ですよね。社内業務システムなどの非競争領域は「Fit to Standard」で徹底的に合理化するとともに、標準化とマイクロサービス化を図ることで、変化に対応しやすいシステム構成に変えていきます。

画像を説明するテキストなくても可
大日本印刷 情報システム本部 デジタル変革室 室長 塩崎美恵さん

酒井:2023年4月には、情報システム本部にデジタル変革室が立ち上がり、塩崎さんが室長に就任しました。デジタル変革室は、どんな役割を担っているのでしょうか。

塩崎:デジタル変革室の役割は、データドリブン経営を実現すべくモダナイゼーションを進め、デジタルやICT基盤の強化・革新を牽引することにあります。取り組みの一つとしては、事業の業務プロセスを可視化すること。事業部門と議論しながら、オールDNPの視点であるべき姿を探っていきたいです。

酒井:システムだけではなく、業務プロセスにまで踏み込んで変えてこそ、クラウドの良さが発揮できるということですね。

塩崎:事業部門によるローコード/ノーコード開発も進めていきたいですね。情報システム本部が把握していないものを含め、事業の現場が抱える課題は本当にたくさんあります。でも、私たちの力だけではなかなかそこまで手が届きませんし、投資対効果の面でも後回しになりがちです。こうした課題を事業部門自ら解決できる手段として、ローコード/ノーコード開発は有効です。

酒井:どうすれば社内にローコード/ノーコード開発が広がっていくと思いますか?

塩崎:最初は、教育プログラムを使った研修を考えていました。でも、それだと研修が済んだら一段落。現場では使われない可能性がありますよね。そこで、事業部門の中でも関心の高いメンバーを集めてコミュニティ化し、現場での活用法を議論しながらローコード/ノーコード開発のパワーユーザーを育成、エバンジェリストとして事業部門で広めてもらうことを考えています。

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海外展開も見据えて、情報システム本部の全員がTOEICを受験へ

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この記事の著者

酒井 真弓(サカイ マユミ)

ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...

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