世界的な経済変動により、企業は投資とコストの急激な見直しを迫られている。それは当然、IT部門も例外ではない。ITの主任務はビジネスに貢献するサービスの提供であり、IT投資の見直しには経営とビジネス、ITが三位一体となった戦略が必要だ。IT戦略の中核であり、ビジネスとIT戦略の整合を証明するポートフォリオ管理を中心に、現在のIT組織が投資の最適化を検討する際に、留意すべきポイントを紹介する。
ITコスト削減検討における大前提
景気低迷が続き、各企業は以前にも増してコスト削減の努力を続けている。それはIT についても同様だ。コスト削減策として考えられるのは、ベンダーやアウトソース先に支払う保守費用の最適化、予備機材・部品の最適化、ビルディング関連費用(主にスペース)の削減、電気代の削減などが挙げられる。ただ実際、既存のIT インフラの部分に後から投資して、コスト削減によってその投資を正当化するのには限界がある。効率化は常に考える必要があるが、劇的な効果を得るのは難しい。
そして中でも難しいのが、IT コストにおいて最も多くを占める人件費の圧縮だ。効率化により人件費の削減と言うが、10%効率が上がったからといって、人件費も10%圧縮できるわけではない。人件費の効率化を考えるのであれば、一部をオフショアするか、アウトソースするなどを検討する必要がある。
数年かけてでもIT コストの削減を戦略的に考えるのであれば、グローバル・オペレーションにまで踏み込むべきだろう。アジアなどへのオフショアやバーチャル・サービスデスクの設置、電気代の安い地域へのデータセンター移設、時差を活用したフォロー・ザ・サンなど、大企業ばかりでなく中堅企業であっても海外のリソースを活用する時代になっている。
しかしながら日本のIT 部門は、海外のリソースを活用することに積極的ではない傾向があるようだ。IT で劇的にコストを削減しようとするのであれば、グローバル・オペレーションも視野に入れる必要があるのではないかと考える。
ただ改めて指摘するまでもなく、IT 部門のコストを最終的に負担しているのはビジネス部門だ。ITコストの削減も、ビジネスに貢献するためのITの最適化と考えなくてはならない。例えばグローバル・オペレーション体制を整えるだけの投資をするのであれば、それは単なるIT の効率化目的ではなく、ビジネスに貢献するための全体戦略に基づいた投資であるべきだ。つまり経営とビジネス、ITが三位一体となってIT投資を計画し、ビジネス側の収益をベースにコストを最適化する文化にしておくことが求められる。
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久納 信之()
日本アイ・ビー・エム株式会社
ソフトウェア事業 Tivoli テクニカル・セールス&サービス
担当部長※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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