JUASスクエア「ITガバナンス2009」。基調講演に引き続いて、独立系ソフトウェア開発会社アイ・アイ・エム代表取締役社長・河野知行氏と、IT調査会社ガートナージャパンバイスプレジデントの松原榮一氏による特別対談が行なわれた。
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ
「私たち日本企業のIT活用の歴史は50年にも上る。この歴史はメインフレームで幕を開けた。しかしクラウドというキーテクノロジの登場により、企業のITはまた新たな進化を遂げつつある。『愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ』という格言にもある通り、メインフレーム時代から培った正しい知識を次代に継承していかねばならない」と松原氏は対談テーマを選んだ理由をそう語った。
その後、氏は「皆さんもご存知のとおり、クラウドといえばベンダーの数だけ定義がありますが、『柔軟なスケーラビリティ対応を実現できる』という点では共通しています。その特徴を支えているのが『仮想化』であることは間違いないでしょう。仮想化のメカニズムは難しいという議論があります。その概念についてわかりやすく説明してほしい」と話を展開。
それに対して河野氏は「仮想化は新しく登場したテクノロジではありません。IBMのメインフレームSystem/360の時代からあった概念です」と即答する。松原氏いわく「ITのいちばん深いところを触ってきた技術者」という評どおり、メインフレーム時代からクラウドコンピューティングに至るまでの流れに沿って、仮想化のメカニズムや進化について解説。話題は、仮想メモリにも及んだ。
次に話題となったのが、テクノロジとIT技術者の関係性だ。クラウドの時代を迎え、両者の関係性がどのように変わるかという松原氏の問いに、河野氏は「IT基盤要員の役割が重要になるはずだ」と指摘。その理由について、SaaSなどを利用するにあたっては、自社の業務負荷やビジネスで求められるサービスレベルについて、IT部門が明確に把握しておかなければならなくなると説明した。
状況把握ができないIT基盤要員は、ユーザー部門からのパフォーマンスに対するクレームと経営層からのコスト削減圧力の板挟みに陥ることになる。ただし、実践は決して簡単なことではない。「最近では、ITベンダーでも、アーキテクチャが分かる人材が少なくなっている。IT基盤要員をプレッシャーで苦しめないためにも、ITILを導入するなどして、サービスレベルの管理をしっかりしていかなければならない」と河野氏は指摘する。これに対し、松原氏も「ITが経営に貢献できるか否かは、その企業のIT要員のスキルに依存する」と同調した。