クラウド製品へのシフトではノンカスタマイズを徹底
商船三井は1884年設立の外航海運企業だ。海運業を中心にフェリー・客船などのBtoC事業、不動産事業など社会インフラ企業としても事業を展開している。
従来の基幹システムは、業務にシステムを合わせてフルスクラッチで2013年に開発されたもの。外部システムとは中継サーバーを立て、バッチ処理でデータ連携する旧態型だった。
片濱氏は前基幹システムが抱えていた課題について、「会計業務に主軸が置かれており、営業支援機能が不十分。追加機能の開発にも時間がかかり、業務の変更に対するタイムリーな対応が困難でした。また、約10年に一度の定期的な再構築のたびに多額の開発投資と大量のリソースが必要になり、ハードウェアやOSの定期的なメンテナンスコストも発生します。海運業は事業規模が急に変わることも珍しくありませんが、その変化に柔軟に対応できていませんでした」と説明する。
これらの課題に対応するため、SaaS(Software as a Service)/iPaaS(Integration Platform as a Service)ベースの新基幹システムを構築することになった。「業界スタンダードであるクラウド製品へシフトし、それに合わせた柔軟な業務改革を行うことを決めました。Fit to Standardアプローチを採用し、ノンカスタマイズを徹底しました」と片濱氏。
刷新プロジェクトはコンセプトの頭文字をとって「SURF」と名付られ、2019年11月にスタートした。ちなみに頭文字はそれぞれ、Standardize(業務を標準化する)、Upgrade(業務を高度化する)、Renovate(業務を刷新する)、Flexibiliser(業務を柔軟にする)を指す。
新基幹システムでは、財務・経理システムと営業管理システムにあたる船舶運航管理システムに、それぞれSaaSの「SAP S/4HANA Cloud, Single Tenant edition」と「VESON IMOS Platform」を新規導入。また、インターフェース基盤(データ連携基盤)としてインフォマティカのAI搭載データマネジメントクラウド「Intelligent Data Management Cloud(IDMC)」を採用し、システム間のインターフェースを集約することとした。