2021年から2022年にかけてランサムウェア被害が急増
2020年から2022年にかけて国内で発生した主なセキュリティインシデントの数をデジタルアーツが独自に集計したところ、マルウェア感染に起因するインシデントの数が2021年から2022年にかけて10倍近くに急増しており、中でも「Emotet」と「ランサムウェア」の感染報告が目立って増えていることがわかったという。
実際のところ、2022年に報道で大きく取り上げられた情報セキュリティインシデントの多くがランサムウェア感染に起因しており、大手自動車メーカーの工場が稼働停止に追い込まれたり、大阪府の病院が診療停止を余儀なくされた事案はまだ記憶に新しい。
公的な統計でもこうした傾向を裏付けており、警察庁が2023年3月に公開したレポート「令和4年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によれば、2022年に都道府県警察から警察庁に報告があったランサムウェア被害の件数は、2021年と比較すると2倍近くにまで増えている。またIPAが毎年発表している「情報セキュリティ10大脅威(組織)」では、2021年から2023年にかけて3年連続でランサムウェアが1位の座を占めている。
その一方で内山氏は、この「10大脅威」のランキングに2023年初めてランクインしたとある脅威に着目する。
「10位に初めて『犯罪のビジネス化(アンダーグラウンドサービス)』がランクインしました。現在サイバー犯罪は組織化・ビジネス化が進んでおり、ランサムウェア攻撃に関してもこの傾向が顕著です。従ってランサムウェア被害が増えていることと犯罪のビジネス化の傾向は、極めて深い関係にあると考えられます」(内山氏)
また前出の警察庁のレポートによれば、ランサムウェアの被害を受けた企業・組織に対して「復旧に要した時間」について尋ねたところ、「2ヵ月以上」という回答が11%、「1ヵ月~2ヵ月」が16%を占めていた。実に3割近くが復旧に1ヵ月~2ヵ月以上を要しており、これに「1週間~1ヵ月」の25%を加えると全体の約半数が復旧に1週間以上を要している。
2022年10月に大阪府の病院がランサムウェアに感染して通常診療の停止に追い込まれたケースでも、全システムの復旧までに2ヵ月以上を要しており、ランサムウェアに一度感染すると長期にわたり事業にダメージを負い続ける可能性が高いことがわかる。
さらには、中小企業がランサムウェアの被害を受けるケースが増えてきているのも、近年顕著に見られる傾向の1つだと内山氏は指摘する。
「警察庁のレポートでも、ランサムウェアの被害を受けた企業・団体のうち53%を中小企業が占めています。中小企業の方々の中には『うちのような小規模な企業は狙われないだろう』と思い込んでいる方も少なくありませんが、実態はまったく逆で、中小企業こそランサムウェア対策に気を配る必要があります」(内山氏)