私が日本IBM時代の2004年秋に、SOAをテーマにして、天城に海外国内の英知を結集しSOAサミットなるものを開催したことが思い出される。あれからもう5年も経っているなんて。
考えてみれば5年前は、主張は正しかったが、SOA用のミドルウェアは、機能も性能も完全からは遠かった。Webサービスの標準やJava EEの実装仕様も開発途中のものが多く、ユーザーは即SOA化を開始した場合にはきっと多くの問題が表面化してきたことだろう。そんなこともあり、「小さく始めましょう」なんて呼びかけていたのは本音だった。
SOAのメソドロジーも、導入経験の無い日本のベンダー全体が手探り状態で、「サービスの粒度はどうやって決めるのか?」なんてところで足踏みしていた。 中にはESB製品だけを購入したユーザーも見受けられたが、多くは机上の検討で知識だけは蓄えたけど、どこからどう実行したらよいか、又本当に実行する価値があるのか?という疑問符や、費用対効果が明示できない、今のIT部門の体制・スキルでは無理、信頼できるベンダーがいない、など色々な理由で、結局はSOAを今までやらないで来てしまった、のではないか。
製品ベンダーの一員としてSOAを売る仕事に限界を感じていたころ、IBMアカデミーのメンバーとしてBPMとSOAをカバーするスタディーに首をつっこみ、BPMからの牽引力が一番の成功要因だと気がついた。同時にBPMという言葉が意味することの奥深さ、幅の広さは、製品ベンダーがリーチできないものであり、ユーザー企業においても責任部門が明白に決まっていないことが多いと感じた。物事は簡単にはいかない。
振り返って見ると、現場の業務改善、業務改革は、そもそも日本のお家芸ではなかったのか。Kaizenという言葉は、Just In TimeやTPS(Toyota Production System:トヨタ生産方式)と同じく英語で知れ渡っているし、改善のなんたるかはIT部門でも知っている話だろう。そこで気がついたのは、現場の人が行う改善は、責任を任されている狭い範囲での問題の発見と改善案の提案であり、さらに広く、部門を超えた仕事の流れや現状においての改善策は、それを専門に考えるのが仕事である人がいないという点だ。
それほど大変なBPMだが、「BPMNで業務の流れ図を書いて、我が社のツールでBPELを生成すれば簡単にBPMが出来ますよ」「ツールから実行環境まで効率の良いBPMはXX社におまかせください」などというベンダーの甘言が、ユーザーを混乱させていることもあり、SOA以上に誤解が広がっているのではと心配する。BPMNで絵を描くのがBPMなのか? 何をすればBPMなのか? BPMとSOAをどうつなぐのが良いのか?
ITI Dayのイベントでは、対談風基調講演とパネルで、それらの混乱を少しずつ解読していきたい。
IT Initiative Day/SOA Special~IT主導のビジネス変革~
開催要項
- 日付
2009年10月16日(金)
- 会場
ベルサール九段
- 参加費
無料
- 詳細
基調講演&対談~『一刀両断、SOA!~ SOAとBPM、やってますか?』
- 清水 敏正(株式会社NTTデータ SOAエバンジェリスト)
- 安井 昌男 (内閣官房 情報通信担当室 電子政府推進担当 補佐官
- 株式会社 豆蔵 執行役員)
パネルディスカッション&質疑応答~『2011年回復のための改革視点』<
- モデレータ
清水敏正
- パネラー
塩田 誠(パナソニック株式会社)
大関 洋(日産自動車株式会社)
澤出 達郎(日本アイ・ビー・エム株式会社 )
尾花 学(株式会社日立製作所)