BIで起きた“ブレイクスルー”をAIでも
──まず、Dataikuという会社の概要を教えてください。
Dataikuは2013年にフランス・パリで創業したAIプラットフォーム企業です。現CEOのFlorian Douetteauをはじめとする4人の創業者は今もエグゼクティブとして経営に関わっています。創業からちょうど10年が経ちましたが、創業者がリーダーとして残っているスタートアップはやはり勢いがありますね。彼らの強い信念が会社の隅々から伝わってきます。従業員はグローバルで1,000人を超え、顧客企業数は約600社になりました。
ビジョンとして掲げている「Everyday AI, Extraordinary People ‐ 日々のAIで、皆が一歩先へ」からもわかるように、Dataikuはデータの民主化を通して、あらゆる組織とあらゆる人々が日常的にAIから恩恵を得て特別な存在になる未来を目指しています。そのためには、あらゆるペルソナ(データエンジニア、データサイエンティスト、ビジネスアナリスト、IT部門担当者、ビジネスエキスパートなど)、組織に属するすべての人々をサポートできるエンドツーエンドなAIプラットフォームが必要です。一つのプラットフォームでAIのライフサイクルで求められるあらゆるプロセスを包括的に支援する、これがDataikuが提供する価値です。
──「Dataiku」という社名は何かに由来しているのでしょうか。
これは「データ(data)」と「俳句(haiku)」を組み合わせた造語なんです。複雑で多様なデータを、俳句のようにシンプルに構造的に表したいという思いから創業者が命名しました。彼らは日本文化をリスペクトしていて、フランスで活動するジャポニズム文化のNPOの支援もしています。パリの本社には日本庭園もあるんですよ。
──2023年4月にDataikuのカントリーマネージャーに就任されましたが、長くBIの世界で活躍されていた佐藤さんがAIのスタートアップに移ったと聞いて驚いた方も少なくないはずです。改めてDataikuに移られた理由を教えてください。
一番大きな理由は「日本のAI市場に大きな可能性を感じているから」です。BIの世界で積み重ねた知識と経験でもって「日本のAIをもっと前に進めていきたい」という思いが強くあります。
私がTableauに入社したのは2013年ですが、当時はまだ日本では「BI=レポーティングツール」くらいにしか認識されていなくて、データアナリティクスをやるなら昔ながらのデータウェアハウスを構築して、キューブを作って……というのが一般的でした。その古いアプローチを変えたのがTableauです。ストーリー(物語)でデータを見せるという手法は、データサイエンティストなどのデータの専門家だけでなく、ビジネス分野の人たちにもデータの価値と重要性があることを気づかせました。データ人材でなくてもデータを使って自分たちでビジネスを変えることができる、データを自分事にできるという確信をもたせたTableauの功績は大きかったと思います。データと人の可能性を解放したBIの世界で起きたブレイクスルーを日本のAI市場でも起こしたいと考えています。
──佐藤さんからすると、現在の日本のAI活用は10年前のBI活用と似ているように見えるということでしょうか。
今では誰でもBIを使えるようになってきましたが、残念ながらAIはまだそうなっていません。一番の課題は業務知識をもっている人々がAIとつながることができていないことにあると思っています。AI人材が足りないという問題もありますが、それよりも業務知識の持ち主がAIの近くにない、だからビジネスとAIがつながることができていないんです。そのギャップを埋めるプラットフォームとしてDataikuが役割を果たせるようにしていきたいですね。
10年かけてTableauがビジネス人材でも使えるBIプラットフォームとなったように、Dataikuを誰でも使えるAIプラットフォームへと日本でも成長させていきたいと思います。