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2028年までのITインフラの3大予測: 「AI専用インフラ」「データセンター戦略シフト」「CXLメモリー需要増大」

「ガートナー IT インフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス」レポート

 「ガートナー IT インフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス」では「インフラストラクチャの未来:予測とトレンド」と題した発表が行われた。「エンタープライズのAI専用インフラ」「データセンター戦略の変化」「CXLメモリー活用の需要増大」など、重要な動向変化を解説した。

2028年までにエンタープライズの50%がAI専用インフラを活用

Gartner バイス プレジデント, アナリスト フィリップ・ドーソン氏
Gartner バイス プレジデント, アナリスト フィリップ・ドーソン氏

 世界は変革期を迎えている。ドーソン氏はインフラ領域のトレンドを「AI」「サステナビリティ」「テクノロジーシフト」の3つの観点から解説した。

 まず、AIについては「2028年までにエンタープライズの50%がAI専用のインフラを活用し、導入を進めていく」という予測の紹介から始めた。インフラチームの目では、AIや機械学習をワークロードと捉えていても、経営者の見方は違う。競合他社との差別化の源泉を見極めた上で、生成AIを様々な分野のアプリケーションに組み込んでいこうとしている。CIOも可能な限りビジネス戦略と一体的なIT戦略を立案し、実行しようと考える。ならば、インフラチームも視点を揃えるべきだろう。生成AIはこれからの企業のインフラ設計に影響を及ぼすことが確実だ。図1に示すように、「イベント相関/根本原因分析からITサービス管理に至るまで、生成AIはインフラの運用を変えていくことになるだろう」とドーソン氏は説明した。

図1:インフラの運用も変える生成AI 出典:Gartner(2023年12月)
図1:インフラの運用も変える生成AI 出典:Gartner(2023年12月) [画像クリックで拡大]

 生成AIは良いことばかりではなく、インフラチームに新しい課題への対応を求めることにもなる。その1つが電力消費量の増大である。一般に人間の脳は12Wの電力を消費すると言われているのに対し、GPT-3が消費する電力消費量は、300万Wにもなるという。これは、データセンターを運営する事業者にとって、これからの設備計画に関わってくることだ。

 「データセンター内で運用するインフラ自体の設計も今後は変わってくることになるだろう」とドーソン氏は指摘した。GPUを始め、多くのプロセッサーのコア密度が増大することになる。同時にメモリーの制約も高まってくる。例えば、生成AIのサーバー構成の主流として知られる「NVIDIA DGX H100システム」の構成は、8個のH100プロセッサー、CPUや2TBのメインメモリー、3.3kWの電源装置を6台、12個の冷却ファンを搭載するものだ。さらにPBレベルのストレージ容量も必要になる。「AIをビジネスのエンジンとして動かすには、ここまでの規模のインフラが必要になることを言っておきたい」とドーソン氏は訴えた。企業内で生成AIのアプリケーションへの組み込みが進んでくることに備え、インフラチームはアプリケーションが価値を十分に発揮できるようなインフラの設計を考えなくてはならない。

70%以上がエネルギー問題からデータセンター戦略を変更

 生成AIのためのインフラ増強で電力消費量が増えれば、その使い方にも目配りが必要だ。2番目のトレンドの柱がサステナビリティである。これに関しては、「2028年まで70%以上のエンタープライズは、エネルギー供給の制約を理由にデータセンター戦略を変更する」という予測の紹介があった。様々な対策が考えられるが、最初にするべきこととしてドーソン氏が挙げたのが現状把握である。電力調達価格はどのぐらいか。電力サプライチェーンの可用性がどのぐらいあるか。サービスレベルで受容できるレベルはどの程度か。この3つの現状から、レジリエンスを備えた計画を立てることになってくる。「その一環として、電力消費量はどの程度かを考えなくてはならない。そして、いつでも説明できるように責任を持ってモニタリングしなくてはならない」とドーソン氏は説明した。

 中でも特に重要になるのが、エンドポイントデバイスの電力消費量を把握である。社内データセンターがある場合でも、これまではノートPCやデスクトップPCの電力消費量は、さほど重要視されてこなかったことだろう。しかし、今後はエンドツーエンドで電力消費量の把握と同時に、環境へのインパクトの検証が求められるようになる。データセンターだけを見ているわけにはいかない。

 データセンターのCO2排出量と、ラップトップPC、デスクトップPCのCO2排出量の比較が必要になる。この次のステップが、一部のデバイスがなくなったと仮定した時の環境へのインパクトがどの程度になるかを計算することだ。対象は業務用のサーバーの他、タブレットやスマホも含まれる。これはいずれも一企業としてのサステナビリティへの貢献を定量的に説明できるようにすることに役立つ。さらにその次が、どんな対策に優先的に取り組むかを決めることだ。例えば、稼働しているとはいえ、なぜそこにあるのかが誰もわからなくなってしまったような「ゾンビ化」した機器が社内にないだろうか。そのような機器は廃棄を検討するといった対策が考えられる。

 一連の検証で留意するべき点として、ドーソン氏は「企業の中で働く人たちが仕事をするときの環境は常に同じではないこと」を挙げた。オンプレミスからクラウドへと、ワークロードをどこかに移しても、問題を解決できたことにはならない。機器をゴミとして廃棄するにしても、日本では自治体のルールに従って廃棄しなくてはならない。「従来、IT関連の廃棄物がリサイクルされる割合は18%だったが、これからは回収、修理、返品を考えていくことになるだろう。再利用でどれだけの価値が創出できるのかを考えることが重要だ」とサステナビリティ向上のポイントをドーソン氏は説明した。

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サーバーの50%以上がCXLメモリーへ

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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