「使いやすさ」実現のため、三層分離モデルを見直し
三重県では現在、「みえのデジタル社会の形成に向けた戦略推進計画(みえデジプラン)」という独自の計画に基づいてDXを推進している。「みんなの想いを実現する『あったかいDX』」という基本理念を掲げ、「暮らしのDX」「しごとのDX」「行政のDX」の3つの分野においてデジタル化政策に取り組んでいる。
このうち「行政のDX」では、県民の利便性の向上や、多様な利用者の目線に立った行政サービスの実現に向け、県庁内の業務プロセス改革や情報セキュリティ対策、デジタル人材育成などに取り組む「県庁DX」を進めているところだ。
具体的には、「県民サービス」「職員の仕事の進め方」「職員の働き方」の3つの領域において、デジタル技術を積極的に活用した変革に取り組んでいるという。「行政手続のデジタル化」「業務プロセス改革」「働き方改革の推進」など、重点的に取り組むべき項目を挙げ、施策を推進している。
これら重点項目に取り組むため、「働き方改革の推進」と並んで前提条件として位置付けられているのが「DX推進基盤」の整備だ。
「職員が働く環境を改革するためには、その基盤となるネットワークやインフラを整備する必要があります。そこで2022年度から新たに『DX推進基盤』の整備を始めました。既に大半の基盤構築を終えて、順次運用フェーズに入っています」
こう語るのは、三重県 総務部 デジタル推進局 デジタル改革推進課 副課長 岡本悟氏。同県は、総務省が2015年に打ち出した庁内ネットワークを「マイナンバー系」「LGWAN系」「インターネット系」の3系統に分離する「三層分離モデル」について、他の自治体と同様に「αモデル」を採用していた。これによって個人情報漏えいのリスクは大幅に低減できたものの、職員の業務効率の面では課題も多かったという。
「職員が普段利用する業務端末からインターネットに直接アクセスできなくなったことで、利便性がかなり低下してしまいました。そこで今回DX推進基盤を新たに構築するに当たり、総務省が新たに打ち出したネットワークモデルも参考にしながら、さらなるセキュリティ対策を講じた上で業務端末からインターネットに直接アクセスできる『β'モデル』の実現を目指しました」(岡本氏)
「ゼロトラスト」に基づく情報セキュリティ基盤を新構築
同県では三層分離モデル以外にも、DXを推進する上で既存のネットワーク構成やセキュリティ対策に課題が多く、特にコロナ禍でそれらが一気に顕在化したという。たとえば、Web会議やチャットをはじめとする各種クラウドサービスや、テレワークの実施などを効率的かつセキュアに運用する基盤整備が十分ではなかった。さらに、DXを進める上で欠かすことができない「データ活用」を推進するための基盤も必要となった。
そこで同県は、DX推進基盤を整備するにあたり、庁内で利用する主要ツールのクラウド移行を主眼とした「クラウドシフト」、テレワークやクラウドサービス利用をセキュアに行うための「ゼロトラスト」、データに基づく課題解決・サービス創出を目指す「データドリブン」の3本柱を主要な方針として掲げた。
具体的には、DX推進基盤をさらに「コミュニケーション基盤」「情報セキュリティ基盤」「データ活用基盤」の3つのサブ基盤に分け、それぞれで整備を進めることにした。このうち情報セキュリティ基盤に関しては、庁内の業務端末から各種クラウドサービスを安全に利用できるとともに、庁外に持ち出した業務端末からもセキュアにインターネットや庁内の環境にアクセスし、業務を支障なく遂行できることが要件として挙げられた。