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酒井真弓の『Enterprise IT Women』訪問記

生成AI活用でリードするベネッセが実現したい“未来”──教育現場での業務負荷軽減の可能性を探る

第20回:ベネッセホールディングス データソリューション部 新領域開拓課 渡部志帆さん


 学びのビッグデータを活かし、一人ひとりが楽しく学び続けられる世界を目指す、ベネッセホールディングス。「進研ゼミ」等の通信教育事業における学習データを基に理解度や得意/苦手の傾向を分析するほか、端々に学習効果が高まる工夫を施している。2023年には、国内でいち早く独自の社内AIチャット「Benesse Chat」を開発し、話題をさらった。現在は、学校現場の業務負担を軽減すべく、教職員とともに生成AIを活用した実証実験を行っているという。同社 データソリューション部 新領域開拓課の渡部志帆さんに聞いた。

共通点が多い教育と介護。カギは「成功体験」

酒井真弓(以下、酒井):ベネッセホールディングスは、DX戦略の中核に「データ利活用」を掲げています。どのような思いを持ってデータを活用しているのでしょうか。

渡部志帆(以下、渡部):「Benesse」とはラテン語の造語で「よく生きる」を意味します。「よく生きる」とは、一人ひとりが、目標や理想に向かって一歩一歩楽しく進んでいくこと。私たちデータソリューション部は、データ活用を通じてそれを実現するため、データ戦略策定から、分析とAI活用環境の整備、データ分析の推進、社内の人材育成まで、一貫して取り組んでいます。

 教育事業においては、お子さん一人ひとりの興味関心や学びのペースを大切にしながら、楽しく学び続けられるようにしたいと考えています。そのために各人の学習データを分析し、つまずいた要因や伸ばす方法を提案しています。

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ベネッセホールディングス データソリューション部 新領域開拓課 渡部志帆さん

 たとえば、特定の教科が苦手という子は、もしかするとまだ楽しんで解けるような良い問題に出会えていない可能性があります。これまでの学習データから、興味を持てるような問題を提示して正答率が上がれば、うれしくなって苦手意識が少し解消されるかもしれません。そんなふうに、データ活用によって学習支援の精度を高め、学びの継続をサポートしています。

酒井:すごい! 今ってそんなふうに学びもパーソナライズ化されているんですね。

渡部:もう一つ、介護事業においては、介護の匠(通称:マジ神)が持つノウハウやスキルを学習させた「マジ神AI」を内製。介護士のスキル向上と高齢者向けホームのご入居者一人ひとりのQOL向上を目指しています。

酒井:マジ神のノウハウは、どうやって収集しているのでしょうか?

渡部:介護記録をデータベース化したり、介護ホームにある様々なセンサーデータを取り込んだりして、AIに学習させています。

 実は、教育と介護は共通点が多く、どちらも成功体験がとても大事なんです。経験の浅い介護士さんにとって、入居者の方への必要なケア、最適なお声がけのタイミングを即座に判断するのは非常に難しいこと。「マジ神AI」によってスムーズに勘所を掴み、早く成功体験を積めるようになることが、仕事を続ける原動力になればと思っています。

ビジネスとシステムの間に立って、現場課題に応える

酒井:渡部さんは事業部門とプロジェクトをともにすることが多いと聞きました。

渡部:そうですね。私たちデータソリューション部は、ビジネスとシステムのちょうど中間にいますので、新商品企画開発など一緒に動くことが多いです。実は、社内のDX研修プログラムが充実していて事業部門のITリテラシーが高く、BIツールの活用はもちろん、自らPythonを使ってノートブックでデータを加工したり、可視化したりするケースもあるんですよ。

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酒井:一定のITスキルを持ち合わせた多彩なメンバーがフラットに議論しながら、一つのプロダクトを作り上げていくんですね。

渡部:一緒に仕事をしていると、自分にはない気づきが得られておもしろいです。助け合うことも多いので、いつも感謝の言葉が飛び交っています。

 また、これは社内でいかにデータ活用を定着させるかにもつながってくるのですが、UI/UXを専門にしているチームも一緒になって作っているのです。私たちはAIサービスやアプリケーション自体は作れても、UI/UXデザインを向上させるのはあまり得意ではありません。でも、UI/UXのメンバーが手を加えてると、途端に自分でもワクワクするような見た目に様変わりするんです。使いやすさも圧倒的に良くなる。それはもう、「私こんなすごいものを作ったんだ」って自己肯定感が急上昇してしまうくらいに素晴らしいです(笑)。

酒井:いいですね。すごく大事なことですよね。

渡部:ただ忘れたくないのは、データはあくまで手段であり、目的ではないということ。最近、「集めたデータを使ってAIを開発したい」という話がよく出てくるのですが、そもそも誰のために、どんな課題を解決したいのか掘り下げていくと、実は必ずしもAIじゃなくて良かったりするのです。

 私たちの役割は、システムだけではなく、ビジネスを深く理解することで、現場の「これを解決したい」という思いを言語化・具現化していくことだと考えています。

次のページ
「未来の教室」に参画 教育現場での生成AI活用を支援

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この記事の著者

酒井 真弓(サカイ マユミ)

ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...

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