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IT部門から“組織変革”を~気鋭のトップランナーを訪ねる~

構想に2年弱かけたNTT大規模バックオフィスシステム刷新 ITガバナンスは“北風と太陽”の2面で統制

システムの利用者を「同じ船に乗せる」ための工夫とは

 日本電信電話(NTT)グループは、2018年からバックオフィス共通業務のDX改革に取り組み、2023年にグループ会社をまたぐ4つの大規模システム刷新を成功させている。グループ関連会社115社、25万人が利用するシステムの刷新という大型プロジェクトを率いたのが同社 技術企画部門 IT室 次長 駒沢健氏だ。ここまでの大規模システム導入プロジェクトをどう推進したのか、ガバナンスを担保するための工夫、そして定着させるためのフォローアップなどについて取り組みの裏側を聞いた。

「自らのDX」に向けて100のテーマを洗い出し

──初めに自己紹介とこれまでのご経歴を教えてください。

 1997年にNTTに入社しています。その後NTTコムウェアに転籍し、セキュリティ製品のエンジニアやコンサルティング業務を8年ほど担当しました。そこから再度NTTに移り、ITガバナンスに関連する業務を今も14年ほど続けています。現在はIT室という部署でNTTグループ918社全体に関わるITカバナンスやIT戦略を作成・実行、また国内においてはIT関連の施策を推進するのが私のミッションです。

 ITガバナンスに従事し始めた当初は、ITを推進するというよりは内部統制室のITガバナンスに関する業務が中心で、いわゆる「守りのIT」を行っていました。そこから2018年にスピンアウトしたのが現在のIT室です。「攻めのIT」にも取り組むようになり、今回のバックオフィス業務改革DXプロジェクトにもつながる取り組みになっていきました。

NTT 技術企画部門 IT室 次長 駒沢健氏

──バックオフィス業務改革DXプロジェクトはどのように本格化していったのでしょうか。

 2018年の当社の中期経営計画に「DX」がキーワードとして盛り込まれました。それまで当社のCIOを務めていた澤田純が社長に就任したタイミングであり、澤田の考えとイニシアチブによって、お客様により価値を届けていくために、まずは自分たちがDXで変わらなくてはいけないと、「自らのデジタルトランスフォーメーション」推進を目標に掲げたのです。2018年の夏ごろには、東日本電信電話(NTT東日本)、西日本電信電話(NTT西日本)、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモなどのグループ会社と協力してDXのワーキンググループを立ち上げました。まずは半年ほどかけて何をトランスフォームしていくべきなのかについて洗い出しを行いましたね。全部で100個ほど出てきたと思います。この100個のテーマから、当社に必要なものを優先順位をつけて行っていきました。

 このプロジェクトの推進体制としては、1つのワーキンググループの中に、分野をさらに細分化したサブワーキンググループを設ける形をとりました。私が担当したIT領域のサブワーキンググループの他にも、いくつかの業務に特化したグループがあります。NTTは通信会社なので、たとえばお客様から電話のオーダーをいただいた場合、その電話の材料を調達して、お客様のもとへ商品をデリバリーし、請求書に関するビリング業務を行い、決裁するといったように業務がいくつかのプロセスにわけられる。この各業務プロセスの区切りをどう最適化できるか、何を断捨離できるか、何を新しいビジネスに変えるかなどを検討していきました。

 具体的には、プロセスごとにどれくらいの工数がかかっているかを割り出します。トヨタ自動車が実践していることで知られる「カンバン方式」と同じように、現在の業務プロセスごとに無駄がないかを確認し、あればそれを徹底的になくしていく。そのために、最初はプロセスの洗い出しから始めました。

 私が率いたITのワーキングは単独で何かをやるということはなく、業務プロセスを見直さないといけない場合に、それをITの仕掛けで修正していくという役割を担うチーム。「作り直した後のシステムはどうなるか」「それは本当に最適化されているのか」「新しい行程に必要なITは何か」などを考えながら見直していきました。新しいITシステムを導入したら、そのシステムは将来においても時流に乗り続けられるものにしないといけません。クラウドやデータの標準化が話題になる中、今構想しているものが10年、20年、NTTのビジネスを成長させ続けられるものになっているだろうかと自問し続けていましたね。

社長もコミットする「TSUNAGU」プロジェクトへ成長

──DXプロジェクトの目指すべきゴールはどう描いていましたか。

 2019年にこのプロジェクトが目指すゴールをDX改革の全体像として発表しています。最初は当時の澤田社長やグループCIOを務めていた澁谷直樹と「DXとはどういうことか」についてよく議論しました。その結果、導き出された答えが「データによって、すべてのステークホルダーに新しい価値を提供する」ということ。

 プロジェクトで行うことは業務プロセスの変革・標準化ですが、我々はプロジェクトが完了した後の未来を見据えてDXを考えていました。バックオフィスの改革ではあるものの、我々従業員のためだけではなく、パートナー企業やお客様に本当に新しい価値を提供できるように、どのようにデータを活用していけるかという観点から業務設計に取り組んできましたね。

──そうしたビジョンは全グループ社員にどうやって共有していましたか。

 DXのワーキングを立ち上げた初期段階には、DXを推進していくための土台作りとしてITガバナンスから着手しているのですが、それが全社員とビジョンやメッセージを共有することに貢献しています。まずは、グループ社員のCIOやCDOに取り組みの方針やメッセージを共有する場としてCIO委員会とCDO連絡会を作りました。その後、ITガバナンスからバックオフィス改革へとプロジェクトのフェーズが進んでいくと、実際にバックオフィスシステムを使う社員全員に毎回会議に参加してもらうのはほぼ不可能です。そのため各社CDOに現場社員の代表となる「Change Agent」を選出してもらいました。プロジェクトにおける行動指針を作成し、Webビデオなどでグループ社員25万人に向けて発信するなどの工夫も凝らしました。

 こうした取り組みによって、社員が自らプロジェクトに積極的に関わる動きが活発化し、「TSUNAGU」という社員コミュニティができました。今回のDXプロジェクトもこの名称で呼ばれています。当社グループ社員25万人の中にはデザイナーの才能をお持ちの方もいまして、実はロゴも社員が作成したもの。ロゴの選定には社員投票を行って、選ばれた社員には社長から感謝状が渡されたのです。こうした取り組みによって社長がこのプロジェクトにコミットしていることを社員に示すことができました。また、各社のCDOからは「このプロジェクトはこういう変革だ」というメッセージをリレー形式で社員に伝える取り組みも行ったりしましたね。

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“4きょうだい”を束ねる重要な要素が「ITガバナンス」

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

竹村 美沙希(編集部)(タケムラ ミサキ)

株式会社翔泳社 EnterpriseZine編集部

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