データ活用を現場任せにしない、伊藤忠商事「HANABI」の活用促進を担う「BICC」の活動実態を訊く
第24回:伊藤忠商事 IT・デジタル戦略部 DXプロジェクト推進室長代行 市橋加代さん

「商人型」ビジネスモデルをアップデートする──伊藤忠商事のDXに掲げられたスローガンだ。ビジネスありき、収益性重視の地に足のついたDXを基本思想に、機動的かつROIに見合う合理的なDXを目指し、内製化を進めている。中でも注力しているのが、データドリブンの徹底だ。プロジェクトをリードする、IT・デジタル戦略部 DXプロジェクト推進室長代行の市橋加代さんに、内情を聞いた。
現場任せにしない プロ集団「BICC」がデータ活用を支援
酒井真弓(以下、酒井):伊藤忠商事では今、データ活用に力を入れているんですよね。
市橋加代(以下、市橋):私たち、IT・デジタル戦略部内のデータ活用専門組織「BICC(Business Intelligence Competency Center)」を立ち上げ、パートナー企業を含む60〜70人体制で、データ活用の社内コンサルティングからデータ収集、蓄積、集計、分析支援まで、一気通貫で社内のデータ活用をサポートしています。
酒井:具体的にはどんな活動をしているのでしょうか。
市橋:主に3つです。1つ目は、データ活用基盤「HANABI」の構築・運用です。
酒井:HANABI、いい名前ですね!
市橋:“成果を打ち上げる”次世代統合データ分析システムとして立ち上げました。データベースに「SAP HANA」を使っているので、「HANA」のデータを「BI」で活用する、という意味も込めています。
2つ目は、HANABIの拡充です。会計データや営業データといった社内データのほか、外部の市況データ、統計情報などを取り込み、活用できるデータとして蓄積しています。また、SAP BusinessObjectsでの帳票作成に加え、Microsoft PowerBIを使って定量分析のための帳票を開発しています。現在、700近くの帳票を提供しており、現場での決算業務をサポートしています。たとえば帳簿点検業務については、それまで手作業で作っていた点検表を自動化することで現場の業務はかなり効率化できており、年間300時間かかっていた作業が、70時間にまで削減できました。
3つ目は、各部署のデータ分析のサポートです。データを業務効率化や新たなビジネスの創出につなげていくため、課題をヒアリングし、分析方法や改善策などを一緒に考えていきます。また、現場の部署に対して、私たちから能動的にデータ活用の提案をすることもあります。

酒井:そもそもなぜ、BICCを設立することになったのでしょうか。
市橋:2000年代に入り、社内のあらゆる部署でデータ活用のニーズが高まってきました。しかし、個別最適でシステムが乱立したことで、社内横断的なデータ活用が難しい状況に。そこで、2018年に基幹システムを「SAP S/4HANA」に刷新するタイミングで、データを一元管理する基盤としてHANABIを構築することになったんです。
ただ、いくらデータ基盤を作っても、現場の担当者任せでは活用が浸透していきません。そこで、データ活用を推進する専門組織として、BICCも同時に立ち上げました。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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