「自信と勇気」が成功を導く、2社のCFOが語る変革の本質
以上の黒柳氏と若林氏の発表を踏まえ、後半は日本CFO協会の日置圭介氏の司会のもとパネルディスカッションが行われた。論点は、CFO組織の未来と人財ビジョン、アクティビストへの対応とCFOの役割、さらに経理財務人財のキャリアなど多岐に及んだ。
日置氏:CFO組織の変革において、効率化と戦略的役割の両立をどのように進めていますか?
若林氏:OPE部門の効率化やシステム化、CoE部門での決算業務の集約化を進めることで、BP人財を増やそうとしています。特に、BPには会計・ファイナンスの専門性に基づき経営の意思決定をサポートすることや事業会社との横連携によりグループを統制するといった役割を期待しています。
黒柳氏:仕組みの変更だけでなく、人財の多様性を重視しています。変革期に必要な才能や発想力を持つ人財の発掘と育成に注力しています。特に、デジタルスキルと財務知識を兼ね備えた人財の育成が急務だと考えています。
日置氏:お二人とも経理財務人財とビジネスパートナー(BP)人財について語られていました。BP人財の育成についてどのようにお考えですか?
若林氏:大きなテーマを与え、自ら仮説を立てて戦略を考えさせることが重要です。言われたことをプラスアルファで実行できる人財が求められます。また、事業会社とのローテーションも積極的に行い、現場感覚を養成しています。
黒柳氏:人それぞれの得意不得意があるので、多面的な評価が重要です。チャレンジングなプロジェクトに取り組ませることで、潜在的な才能を引き出すことができます。また、外部のセミナーや異業種交流会への参加も奨励しています。
日置氏:なるほど、そうした人財の育成において、どのようなスキルセットを重視していますか?
若林氏:従来の会計・財務スキルに加えて、データ分析能力やビジネスモデルを理解する力が重要だと考えています。また、コミュニケーション能力も不可欠です。
黒柳氏:同感です。さらに、私たちは経営戦略を理解し、それを財務の観点から支援できる能力も重視しています。加えて、グローバルな視点も欠かせません。
日置氏:DNP様のアクティビスト対応と経営改革の発表に関する話題は、経理財務に携わる多くの方々にとって非常に興味深いものです。かつての「敵対的」な見方から脱却し、建設的な対話を通じて企業価値向上を目指す姿勢は、示唆に富むものですね。
黒柳氏:アクティビストだけでなく国内外の機関投資家の視点を取り入れ、自社の課題を正直に見つめ直したことは意義があるものでした。たとえば自社のガバナンスコード対応の策定や社内で仮想的なアクティビストの提案を作成し、準備していたことが実際の対応に役立ちました。また、IRチームとの連携も強化しています。
若林氏:私は、CFO組織には社内外のアナリストと対等に話をしていく姿勢が求められていると思います。そういう意味で『社内アクティビスト』を目指すことも必要です。経営に対して建設的な提案を行い、常に企業価値向上を意識することが重要です。具体的には、資本効率の改善や事業ポートフォリオの最適化などを積極的に提案するなどです。
日置氏:なるほど、数あるCxOの中でも、CFOこそが戦闘力を持てるともいえますね。では最後にこれからのCFO組織に求められる変革と人財像についてお聞かせください。
黒柳氏:やはり現場との交流が重要だと思います。経理は事業部門から距離を置かれがちですし、日常の報告ラインでは把握できない現場での状況や情報を、コミュニケーションを通じて入手することが重要です。相手に評価されるよう徹底的にサポートし、信頼関係を築き、現場の生の情報が入手できるようになることが重要と考えます。
若林氏:どういう人財が必要かという点については、一言で言えば、自分で仮説を立てて行動できる人ということに尽きると思います。
パネルディスカッションは制限時間いっぱいまで及んだ。最後に、両氏が強調したのは、CFOに求められる「自信と勇気」だ。若林氏は「成功を導くのは自信と勇気です。周到な準備をした上で、決断する勇気を持つことが重要です」と述べた。黒柳氏も同様に、チャレンジ精神の重要性を強調してディスカッションを締め括った。