オープンデータを用いて、気になる駅の「消費力」を可視化
JR東日本が「駅カルテ」の次なる一手として選んだのは、国勢調査や住宅・土地統計などのオープンデータとの掛け合わせだ。「駅カルテ 消費ポテンシャル」は、駅利用者の“潜在的消費力”を算出するための新機能であり、年間期待購買力や年間期待消費支出といった項目を駅ごとに確認できる。石田氏は、「元々、社内でも『消費ポテンシャル』のようなデータは有効だと確認していました。出店計画などを策定する際には乗降客数だけでなく、『どれだけ支出をするのか』といった年収や支出にかかわるデータを含めて、“金額としての価値”を判断できれば、より役立てていただけるはずです」と話す。
たとえば、八王子駅から新宿駅へと通勤している人、恵比寿駅から新宿駅へと移動している人など、始発駅エリアの年収情報を基にして該当駅の消費力を計るような仕組みだ。従来、推計や感覚として捉えていた部分をSuicaデータの実数に基づいた情報で判断できるようになる。駅カルテの利用ユーザーにとっては「特定属性の乗降客数が多いため、出店候補エリア」と判断していたところが、実は消費力でみたときには下位だったという発見にもつながるだろう。
なお、「駅カルテ 消費ポテンシャル」の対象エリアは、首都圏エリアを中心とした約250駅であり、提供は「Station Finder for Area Marketing」に限られる。これまで同サービスの「Standardプラン」を利用していたユーザーは、約3分の1ほどの追加料金で消費ポテンシャルを利用できるが、「Lightプラン」(簡易レポートのみ、3ヵ月あたり6万円)ユーザーは“消費ポテンシャルメニュー”に切り替えなければならない。Standardプランは、契約形態に応じた枚数のチケットが付与され、レポートごとに消費していく利用方法だが、「標準価格のみではなく、状況や要望に応じて柔軟に対応していきます」と日立製作所 佐伯祐太氏は説明する。
今回は「駅カルテ 消費ポテンシャル」という形で、ユーザーニーズに応えたJR東日本だが、駅カルテのようなデータに基づいて包括的に支援をしてほしいという声も届いているため、将来的には新たなサービス提供も視野に入れているという。その上で、まだまだSuicaデータを活用する余地は残っているとして、データサービスにも可能性があるかもしれないと言うのだった。