“データの流動性”が価値を生む──Data Cloudの本質
ハースト氏は、Data Cloudのプロダクトマネージャーおよびプロダクトリーダーを担当しており、Salesforce Platformとの連携に力を注いできた人物。この1年間で重点を置いてきたものが、統合的な「メタデータレイヤー」の構築だ。
「Data Cloudは、CDPとしての役割を果たしてきました。そこから、メタデータレイヤーを通じてSalesforce Platformに組み込むことにしたのです。これにより、レポートやページレイアウト、スキーマなど、Salesforceのコア機能がData Cloudでも利用できるようになりました。つまり、Salesforceのユーザーは、従来と変わらない形でData Cloudも活用できるようになったのです」
2022年9月のローンチから約2年が経過する中、北米地域におけるユーザー数は過去1年間で130%、データ量は240%(ともに前年比)も伸長しているという。この背景には、これまでサイロ化してしまい、連携できていなかったデータを活用したいというニーズがある。たとえば、自社でデータ活用を推進したいと考えても、CDPやDWH(データウェアハウス)を十分に活かせていない現状があるだろう。その原因の1つとして、特定のデータソースに限定されたアプリケーションを構築してしまうことが挙げられる。
データレイクやデータストレージを提供しているベンダーは、すべてのデータを自社プラットフォームに集約することで課題解決を図ってきた。このアプローチは「データの一元化」には役立つものの、アプリケーション単位で考えたときには必ずしも適していないとハースト氏。また、従来型のCDPがマーケティング領域の課題にしか寄与できていない点も指摘すると、Salesforce Platformの機能性を拡充するというポジションにData Cloudを昇華させることを目指したと語る。セールスやマーケティングなど、各領域を支援するためのアプリケーションごとに、Data Cloudをハブとして“データの流動性”を確保したという。
この方針は、Agentforceのような新機能とも容易に連携できるなど、既に効果が表れている。ハースト氏は「これまでは新機能を追加する度に、データレイヤーを意識する必要がありました。しかし、Data Cloudによって、すべてのクラウドアプリケーションが即座にデータを利用できるように生まれ変わったのです。データの所在に関わらず、統合的にデータを全機能で活用できます」と述べた。