富士通とNTTデータは「Oracle Alloy」で“日本のソブリンクラウド”普及を加速する
AWSやMicrosoft Azure、Google Cloudなど、主要なクラウドベンダーでは、政府専用のクラウドサービスを各国・地域に設定することで、先述したソブリンクラウドのニーズに応えようとしている。また、「AWS Outposts」「Azure Stack Hub」「Google Distributed Cloud Hosted」など、パブリッククラウド・インフラの一部を切り出したサービスを顧客のデータセンターで動かすことで、企業のソブリンクラウドニーズにも応えていく狙いだ。
一方、ソブリンクラウドニーズに積極的に応えようという動きを見せているのがOracleだ。Oracle Cloud Infrastructure(OCI)のクラウドリージョン全体を顧客企業のデータセンターで動かせる「Oracle Cloud Dedicated Region」(以下、Dedicated Region)あるいは、パートナーが独自のクラウドサービスとしてOCIのハードウェア、ソフトウェアスタックをすべて利用・制御できるOracle Alloyを使うことで、より高いレベルでソブリンクラウドを提供できるようにしている。
Oracle Alloyは、パートナー企業が独自のクラウドサービスとして、“パートナーの運用体制下”で実現できるものだ。日本のようにITシステムの構築・運用をSI企業などに依頼することが一般的な市場では、企業自らがDedicated Regionを用いてソブリンクラウドの環境を整えて運用するよりも、パートナー企業がOracle Alloyでソブリンクラウドを実現して提供する形のほうがよりフィットするだろう。
そして、このOracle Alloyをいち早く採用すると発表したのが、日系大手SIの富士通だ。Oracle Alloyを自社データセンターに導入し、2025年度から日本市場向けにソブリンクラウドサービスを提供するという。富士通では、Oracle Alloyを活用したソブリンクラウドサービスの提供に向け、Oracle Alloyの機能を日本のソブリン要件に最適化するため、106の要件として機能実装を進めていく。その上で、日本国籍かつ“日本に居住する”エンジニアによるサポートを提供することで円滑な導入、運用体制の強化にも取り組む。
また、富士通に続いて採用に踏み切ったのは、NTTデータだ。同社は2017年から金融機関や公共機関向けのクラウドサービス「OpenCanvas」を提供してきた。同サービスは、金融情報システムセンター(FISC)の安全対策基準に準拠した高セキュリティなクラウドサービスを強みとして、既に多くの顧客から信頼を得ている。今回のOracle Alloyの採用によって、このOpenCanvasを強化し、OCIの幅広いサービスを顧客に提供していく。既存のOpenCanvasとAlloyを連携させることで、より柔軟かつ拡張性の高いソブリンクラウド環境を構築できるだけでなく、金融機関や公共機関向けに特化したサービスやセキュリティ対策を提供することで、業界特有の顧客ニーズにも応えられるだろう。
加えてNTTデータは世界各国に拠点をもっており、そのグローバルなサポート体制を活用することで、海外展開を検討している企業に対してもソブリンクラウドサービスを提供できる。二番手ではあるが、富士通に先行してOracle Alloyを用いたソブリンクラウドサービスを展開できそうだ。一方、富士通は日本の幅広いソブリンクラウドのニーズに対応できるが、NTTデータは金融機関や公共機関にターゲットを絞った形でのサービス展開になるだろう。