AIエージェント実用化の展望、日本企業へのアプローチは
──ソフトウェア開発において、AIモデルの重要性が急速に高まっています。このような状況下、従来型のアプリケーション開発モデルは、今後どのように発展していくと予測しますか。特にアプリケーションレイヤーは、どのような役割を担うとお考えでしょうか。
アーロン・レヴィ氏(以下、省略):従来型のアプリケーション開発の役割は、AIの台頭によって減少するのではなく、むしろ変化・拡大していくと考えています。特に、AIと企業データを安全に結びつける「橋渡し」としての役割が重要視されていくでしょう。
「OpenAI(GPT-4)」「Google(Gemini)」「Anthropic(Claude)」などのLLM(大規模言語モデル)を見ると、驚くべきスピードでより安価に、よりパワフルになっています。多くの企業が望んでいることは、これらの強力なAIモデルを自社にある大量のデータに活用することです。そして、その重要な企業データの多くは、Boxに格納されています。
また、アプリケーションレイヤーの役割も大きく進化しています。企業の機密データをAIモデルに安全に送信する、信頼できるデータの受け渡し役として機能するだけでなく、適切なワークフローやセキュリティ、ガバナンスを提供することで、プロセスを適切に統制してくれるでしょう。さらに、既存のシステムとAIを効率的に連携させる「API管理」を通じて、シームレスな統合を実現します。
私たちが構築しているBoxプラットフォームは、これらすべての要素を包含する形で設計されており、「企業データの保護」と「AIの活用」を両立させる重要な基盤としての価値がさらに高まっていくと確信しています。
──今回のイベントでは「Box AIエージェント」がもたらす、ワークフローの最適化を披露しました。現実的にAIエージェントがオフィスに浸透するのは、いつ頃だと予測しますか。
非常に近い将来だと確信しています。私たちは企業がAIモデルを取り入れ、そのデータと接続してエージェントを作成できるようにする「Box AI Studio」を発表しました。これらのエージェントは時間とともにより(機能が追加されて)強力になり、エージェント自身がモデル内で“完全なタスク”を独自に完了できるようになるでしょう。こうした世界が私たちの未来であり、(AIエージェントがもたらす)力なのです。
──とはいえ、多くの日本企業はAI導入に慎重です。日本企業にAIエージェントを浸透・活用してもらうためには、どのような動機付けが必要でしょうか。
常に企業は、ワークフローの自動化、ビジネスプロセスの強化、データや情報から多くの価値を引き出すため、より良い方法を探しています。これこそが「AIの本質的な価値」だと考えています。
AIの導入自体を動機付けるのではなく、むしろ「効率性の向上」という観点から考えることが重要です。特に日本企業の場合、(労働人口減少といった課題解決の観点から)効率性の向上に焦点を当てることで、AIは実現のための具体的なソリューションとして受け入れられやすくなります。企業が目指しているのは、より迅速な業務遂行、より適切な意思決定、そしてより大きな成果の実現です。AIは、これらすべての目標達成に貢献できるツールなのです。