大規模システム障害を経たみずほ“IT運用改革”の今 7万パターンの障害対応は生成AIで自動化できるか
1日9万件のエラーメッセージが150件に? グループ副CIOが語る改革の成果
みずほファイナンシャルグループは、2002年の3行統合以降、大規模なシステム障害を経験しながらも、基幹システムの刷新・統合を進めてきた。現在は、2025年に向けて「レガシーからの脱却」を目指し、基幹システムの一元化やパブリッククラウドの活用を推進。さらに、運用保守の高度化を目的とした観測性の向上やAIの利活用にも積極的に取り組んでいる。2024年10月15日に開催された「ServiceNow World Forum Tokyo」では、みずほフィナンシャルグループ グループ副CIOの山本健文氏が登壇。同グループにおけるDXのこれまでの進捗と課題、そして今後の展望について語った。
3行統合を経たハイブリッドクラウド構築の歩み
9月30日、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)は2026年4月を目途に傘下のみずほ銀行とみずほリサーチ&テクノロジーズの統合を検討していると発表した。これにより、これまで受託側・委託側の関係にあった2社が一気通貫でシステム開発を実施することとなり、IT領域における一層の強化が図られるという。山本氏はこの発表について講演の冒頭で紹介し、「このような発表からも、ITを中心に据えて取り組もうというみずほの意思が感じられるはずだ」と語る。

もともとみずほ銀行の業務は、全国の支店を窓口とした対面サービスが主流だった。そこから時代とともにデジタルチャネルを強化し、2002年に第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の3行が統合してみずほ銀行となってからは、システム障害などの問題を経験しながらも広範囲でのDXを進めている。2011年からは勘定系基幹システム「MINORI」、2014年からインターネットバンキング「みずほダイレクト」の構築に取り組み、いわゆる「2025年の崖」対策として、基幹システムの一元化やパブリッククラウドの活用を進めている。
こうした取り組みの中で山本氏は、“新しい金融”を支えるプラットフォームとして、MINORIの改革プロジェクトを紹介。MINORIは、対面・非対面のサービスを支えるチャネル系が連携するハブ機能を、メインフレーム系とオープン系で再構築したハイブリッドクラウド環境で運用するもの。膨大な処理にはメインフレーム系を引き続き使用するものの、それ以外はオープン系へと移行させているという。
当初はオンプレミスのデータセンターの中にクラウドを立て、プライベートクラウド環境として活用していた。2018から2019年には、セキュリティを強く意識しつつ、パブリッククラウドの使用を開始。利用者の拡大とともに2020年よりインターネット接続にも機能を拡張し、利用範囲を広げている。そして2023年からは、Amazon Web Services(AWS)やGoogle Cloud Platform(GCP)、Microsoft Azureなどのマルチパブリッククラウドを採用した。東京・大阪リージョンにも広げ、ハイブリッドクラウド構成をとっている。
基盤の増加にともなって、みずほFGではシステムの特性に応じた基盤選定を実現するため、下図のような“4つの象限”を踏まえた選定基準を設けた。この基準では、縦軸に可用性・信頼性、横軸にアジリティが置かれ、A~Dの4つの象限に分けられる。たとえば、高い安全性・品質・運用サービス水準が求められる勘定系システムなどはAの部分に位置するメインフレームなどが適しているが、反対にSoRといわれるDの部分に位置するものに関してはパブリッククラウドの導入が適しているとわかる。現在、みずほFGのパブリッククラウド利用数は2022年比で約2倍に拡大し、既に300を超えるシステムがクラウドに移行済みだ。さらに基幹系システムのデータマートは、パブリッククラウドへの移行を目指して再構築しているところだと山本氏は話す。

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伊藤真美(イトウ マミ)
フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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