「デバイス」「ネットワーク」「ワークスタイル」3つの変化がもたらすクラウドコンピューティングの爆発的な増加
冒頭で八子氏は、1日8時間以上働くテレワーカーが2010年には20%を越えるとのデータを示した。また、プロセッサの処理能力やネットワーク速度が劇的に伸びており、かつてメインフレーム時代に行っていたセンター処理のコンピューティングがクラウドコンピューティングにより復活しているなど、ビジネス環境変化の時期にあることを唱えた。
クラウドコンピューティングの特徴は主に「利用した分だけ料金を支払う」「圧倒的な低コスト」「動的なリソース配分」「仮想化」「ユビキタスサービス」の5つが挙げられる。このうち特に革新的なものはリソース配分であり、ユーザーの増加に伴ってリソースを追加できる点はメリットが大きい。
スマートフォンやネットブックの利用が進むに従って、固定電話は携帯電話やスマートフォンに、コンピューティングはデスクトップPCやノートPCからネットブックへ移行するなど、ワークスタイルに変化が見られるようになった。八子氏は「いまだに電話だけで仕事をされている方はいらっしゃいますか?」と、今後モバイル環境でのコンピューティングがさらに重要になると指摘する。
景気低迷の中でも市場が拡大しているスマートフォンは、携帯電話と比較すると大きな画面、強力なプロセッサ、パソコンのような通信機能、そして、アプリケーションの自由な追加を行うといった利用方法が主な特徴だ。八子氏は、Android搭載スマートフォンやネットブックの出荷台数の伸びを示すデータを示し、「今後、Google Chrome OSの登場により低価格化が期待されている」と語る。加えて、スマートフォンはさらに大画面化やUIのリッチ化が、逆にネットブックは小型化が進み、クロスオーバーする両者に向けたコンテンツ市場が訪れるであろうと予測した。
また、技術の向上に伴ってシェアを高めるスマートフォンとネットブックにより、クラウドの利用も進んでいくとも八子氏は読む。Chrome OS搭載のネットブックが登場すれば、端末価格も下がり、ノートPCの出荷台数を追い抜き、2013年頃にはWiMAXなどモバイルブロードバンドも普及するため、データ保管場所やマシンパワーの補完、アプリケーションなどにクラウドを利用するスタイルが主流となり、クラウドコンピューティング全盛時代が到来すると予測した。
業務系アプリケーションもクラウドで代替えされ得る
こうした将来には、コンシューマ向けだけでなく、業務系アプリケーションにおいても新たなビジネスチャンスが訪れるだろう。八子氏は、特に顧客数や処理件数が多く、物理的スケーラビリティのある業種・職種をターゲットとした事業に着目して研究している。顧客数の多い業務の例としては、外出先からのモバイル機器による業務報告、ノード数の多い例では、外勤者のGPSによる勤怠管理や個人認証、そして物理的スケーラビリティが必要な業務では、飲料業などの店頭棚出し報告や、デジタルサイネージと連携した誘導広告などが挙げられる。