無念の死を遂げた政治家
元外務大臣の安倍晋太郎(1991年死去)は、膵臓癌でガリガリに痩せても、背広の肩パッドを厚くして痩せていく身体を従来通りに見せ、テレビカメラの前でゴルフクラブを振り回し、痛々しい姿を見せた。
元副総理の渡辺美智雄(1995年死去)は、そんな安倍を見て哀れだと同情したが、数年後、当の渡辺も同じ膵臓癌に苦しめられた。元自民党副総裁の大野伴睦(1964年死去)が入院した時は、自民党幹部たちが、大野が詠んだという俳句まで披露。だが、後に全て偽作だったことが判明した。
彼らのように、首相になる一歩手前で病魔に侵されるのは、無念の想いと、政治的非情さとが重なり合い、何とも言えない刹那さ漂う。
政治評論家の伊藤が仕えた池田(1965年死去)は、咽頭癌であることを当時の官房長官鈴木善幸が「前癌症状」という奇妙な表現で発表した。だが、実は「前癌」ではなく「全癌」だった。東京オリンピック閉会式の翌日に首相を辞任するが、既に癌は身体中に転移しており、結局、帰らぬ人となった。
「ハプニング解散」を経て、初の衆参同日選の真っただ中に病に倒れた元首相の大平正芳(1980年死去)は心筋梗塞だった。演説直後に体調不良を訴えた大平は、すぐに虎ノ門病院へ入院。当初、入院中の浴衣姿での写真も公表されたが、投票日を目前に、この世を去った。 池田は死去した時、すでに4年以上、首相を務めていた。大平も選挙中に死去し無念ではあっただろうが、頂上にまで登り詰めたのだから、まだ救われる。
大物政治家の死ほど政局を揺さぶるものはない。小沢の今の段階での病状は不明だが、場合によっては「陸山会」土地購入事件以上に参院選の行方を大きく左右することになるかもしれない。(敬称略)