自社でシステムを完全内製した理由とは
続く第2フェーズでは、構築したシステムを展開する部門を広げると同時に設計資料の統合とペーパーレス化も実現した。全ブランドで資料の形式を統一したことで、「材料部門や工場での転記作業が不要になり、特に海外工場での情報伝達が効率化しました」と上田氏は話す。最後の第3フェーズでは、サイズオーダーに対応するためにシステムの一部をカスタマイズするなどの改修を行いつつ、全社へのシステム展開を達成させた。
なお、今回構築した新しいシステムはワコールで内製されたものだ。その理由について上田氏は「過去の設計情報はすべて会社の資産です。インナーウェア、特にブラジャーはカップ×アンダーでサイズが展開される製品の特性上、設計に複雑性があり、過去からの継続品番や数十年続く定番製品も多く存在します。他社のシステムに切り替えると、これまでワコールが築いてきた製品情報をすべて連携することができないため、自社に合わせた形でシステムを再構築しました」と説明する。
システムの刷新という一つの目的に対してはゴールを迎えたものの、「システムは“生きもの”なので、作って終わりではありません。今後も改善を行っていくことが重要だと考えています」と上田氏。現在も月1回のペースで分科会を開催しており、現場の声を積極的に取り入れながら、改善の検討を継続的に進めているという。
システムはリリースされたが、人員不足の影響もあり、業務効率化にはまだまだ課題が残っている。「今後はこのシステムによって生み出された時間を新製品の開発に活用してほしいです」と上田氏は述べる。システムを統合したことで一元化されたデータを製品開発にもつなげてほしいと話す。
「モノづくりの現場からは製品や素材などの情報を、ECや店頭からは顧客情報を互いに連携し合うことで、よりよいモノづくりやサービスの提供につなげていけると考えています。情報活用のカギを握るIT部門として、世の中のスピード感に遅れを取らないよう、モノづくりが活発にできる仕組みをこれからも提供していきたいと思います」(上田氏)