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「SX銘柄」選定企業が語る“SXの定義”──無形資産が重視されるからこそデータ化の仕組み整備を

すべてのコアとなるデータを経営に昇華させていく「SX by DX」

ESGを1つの“ストーリー”にして発信していくことが重要

 さて、SXに取り組むことで企業価値を高めるにしても、大事なのが情報開示や情報発信だ。無形のため財務諸表に載ることがなく、企業が上手に発信していかないと投資家や社会に伝わらない。

 サステナビリティに関する企業情報開示をどうすべきかは、長らく課題だった。増田氏も取引企業や投資家と意見交換しながら頭を抱えていた。そこで、勉強会的なコミュニティを作ろうという話になり、日立とは別に「一般社団法人ESG情報開示研究会」を立ち上げて広域的な団体で活動することにした。設立から携わった増田氏は同研究会の共同代表理事を務めている。

 欧州だとサステナビリティに関する情報開示には、法律で公開事項が定められたCSRD(企業サステナビリティ報告指令)がある。一定の規模以上の企業はCSRDに則り、ESG関連の情報開示をしなくてはならない。国際規格では、IFRS財団配下にあるISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が定めるESG情報開示がある。ISSBを受けて日本版となるSSBJが設立され、現在は着々と準備が進められている。

 増田氏は「ESG情報開示研究会を設立した2020年当時は、世界各地で有象無象たくさんの基準があり、相当混乱していました。今ではグローバル、欧州、アメリカ(SEC)、日本で連携した動きがあり、だいぶ収れんしてきたと思います」と話す。

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 任意開示に関しては、各企業が統合報告書やサステナビリティレポートという形で自主的に開示している。とはいえ、増田氏によると「トレンドとしては、法定開示がどんどん広がる傾向にあります」という。サステナビリティに関する情報開示は企業価値を左右する重要な要素であることが定着してきているため、きちんとした規則を定めたうえで進めていくという動きになっている。同じ規則で開示すれば比較もできるし、法定開示であれば(正確さなどで)保証も入るためだ。

 日本では統合報告書を開示している企業は1,000社ほどあり、世界でも稀と言えるほど定着している。そのため今後は財務と非財務、つまり有価証券報告書と統合報告書、あるいはサステナビリティレポートをどう棲み分けていくのかが課題となりそうだ。

 ちなみに、英国や米国だとワンストップレポートで出す傾向があるという。1本のレポートにまとめるため数百枚ほどの分厚いレポートとなるものの、財務・非財務、あらゆる法令にも対応して「全部入り」の状態になっている。これが投資家にとって「便利だ」と好評であれば、日本でもそれに習うことになるかもしれない。

 海外の動きを見て、増田氏は「ESGのEとSとGが断片化した状態ではなく、つながったストーリーで発信していくことがとても大事」と指摘する。言い換えると、欧州や米国などサステナビリティの先進企業はストーリーでの情報発信に長けているのだとか。

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 海外の企業ガバナンスの分野では「Comply or Explain」という表現がある。これは企業に対して「規則やガイドラインに従う(Comply)か、従わないのであれば説明(Explain)せよ」といずれかを迫っている。日本の場合は規則に従うことに注力するが、欧州や米国は逆に「うちの企業はこういうビジョン・パーパスで、こういう戦略で……」とあらゆる要素がつながったストーリーを作って説明する。これが投資家の理解や共感を呼ぶのだという。

SX by DX──実現に欠かせないITリーダーの貢献

 経営戦略の話が続いたが、サステナビリティに関する情報開示ではIT担当者やITリーダーが重要な役割を果たす。こうした情報開示では全社横断的なデータが欠かせない。現状の課題について増田氏は「効率的な情報収集体制がまだ不十分。Excelまたは紙で管理されて情報も散見され、DXやAIを効果的に活用することで効率的に社内のデータをクローリングして、キュレーションして出して行くという仕掛けが必要」と指摘する。

 続けて増田氏は「SXもまさにそう。サステナブルな社会の実現には、デジタル技術が貢献できることは非常に多い。だから『SX by DX』という言い方もあります。データをきちんと整理し、解析したうえで正確なファクトを発信できるかはITリーダー、CIO、CISOのような方々のリーダーシップに依るところが大きいですので、大いに期待しています」と力を込める。

 IT部門が関与する部分は情報開示のアウトプットにもある。先述したようにワンストップレポートになると、数百ページにも及び、とても読めるものではない。そこで多くがAIで読み込ませて、情報を抽出していくなんてことをする。

 増田氏は「投資家にしてもすべての企業のすべてのレポートを読む人はおそらくいないでしょう。時間がありませんから。でもトップメッセージは大抵読むので、そこはかなり注力してきちんとまとめます。一方で統合報告書にしてもサステナビリティレポートにしても、そのコンテンツ全体は機械に読ませることがこれからますます進むでしょうから、XBRLによるタグ付けとか機械可読性をあげていく必要があり、IT部門の皆さまの力が重要になります」と言う。

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大幅赤字から一転、成長に転じた日立の「SX」の軌跡

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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